肥満細胞腫(MCT)

2014年4月27日

中年齢以降になると、皮膚にはさまざまなデキモノができるようになります。皮膚にできるデキモノには、皮膚の変化によってできる非腫瘍性のイボ、良性腫瘍、悪性腫瘍などの分類があります。皮膚のデキモノには良性の病変が多いものの、中には悪性のデキモノもあるので注意が必要です。その中でも特に注意が必要なので、皮膚にできる悪性腫瘍のひとつである肥満細胞腫です。この腫瘍には『大いなる詐欺師』という異名があり、その名の通りに、いろいろな形、大きさ、硬さ、色のパターンがあり、また、大きくなったり小さくなったりと大きさが急に変化をしたりもします。皮膚にできるデキモノの見た目だけで良悪が判断できない大きな理由のひとつにこの腫瘍の存在があります。

肥満細胞腫の症状
発見時の初期には、ほとんどの場合で無症状です。発見後からすぐに悪化するものから、数年間に渡って変化を示さないものまであります。進行してくると、デキモノ自体の強い炎症反応や転移部位によって様々な臨床症状を示します。主な転移部位は、初期であっても、肥満細胞腫として疑える特徴が下記として挙げられます。

○大きさが日によって変わる
○触っていると、周囲が赤くなったり腫れたりする
○デキモノの周囲に強い皮膚炎が生じる

転移は、主にリンパ行性であり、所属リンパ節に入った後に、肝臓や脾臓に転移することが多いとされます。更に進行すると、骨髄が犯され、生命の維持が難しい状態に陥ります。また、肥満細胞腫の場合、腫瘍細胞自身が分泌する物質(ヒスタミンやヘパリンなど)によっても様々な合併症(腫瘍随伴症状)が生じます。特にヒスタミンによる胃十二指腸潰瘍はしばしば発生し、管理の難しい嘔吐や下痢、食欲不振を起こすことで、QOL(生活の質)を大きく下げてしまいます。

肥満細胞腫の診断
皮膚でできたデキモノに対して注射針を刺入し細胞を採取します。採取した細胞を顕微鏡で観察することによって診断が可能な場合がほとんどです。中には手術による切除後の病理検査によって確定診断されるものもあります。
本疾患が疑われた場合、レントゲン検査や超音波検査、リンパ節の検査等を行って腫瘍の転移の状況を確認する必要があります。

肥満細胞腫の写真
下記の写真2枚はいずれも肥満細胞腫を示したものです。肉眼の特徴で腫瘍の種類を判断できない典型的な例となります。

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肥満細胞腫の治療
外科療法
肥満細胞腫の治療の主軸となります。切除後の病理検査により腫瘍の悪性度や腫瘍細胞の広がりを調べます。悪性度や広がりを調べることによって、外科療法のみで治療を終了できるか、外科療法単独での治療が不十分かの判断をします。
放射線療法
外科療法単独での治療が不十分であった場合に選択できる治療方法です。道内では、酪農学園大学、北海道大学にて実施可能です。治療には、複数回の全身麻酔が必要なのと、放射線療法そのものの副作用もあることから、選択する際にはしっかりとした相談が必要となります。
内科療法
放射線療法が適応とならない、または選択しない場合には、抗がん剤や分子標的療法の選択が可能です。近年では、国内での販売が開始されたことからも分子標的療法の注目が高まってきています。
その他
副作用の少ないインターフェロン療法や、腫瘍随伴症状を抑えるためのステロイド治療等もあります。しかしながら腫瘍そのものへの治療効果は確立されておらず、腫瘍によって悪化する全身状態を少しでも良くする目的で使用されます。

肥満細胞腫の予後
腫瘍細胞の悪性度や広がりの状況によって大きく異なります。初期で完全に取りきれた場合は、比較的良好な予後を示しますが、完全にとり切れない場所(顔面や四肢などの手術が難しい部位)に生じてしまった場合には、再発や転移の可能性が高まります。

普段からスキンシップの一環で、体をよく触ってあげて年齢と共に増えてくる体のデキモノを早期に発見してあげる事が一番大切と思います。デキモノを発見したらあまり悩まずにまずは動物病院で相談することをお勧めいたします。

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