高齢の愛猫が急に目が見えないような仕草を取った場合、高血圧性眼症を疑う事ができます。高血圧性眼症は網膜剥離や眼内出血を主な症状とし、高齢で急性に視覚低下を示すという特徴があります。
高血圧性網膜症の診断
○収縮期血圧が180mmhg以上である
○高血圧性網膜症を認める(網膜血管の蛇行や点状出血や出血、網膜浮腫や剥離)
○高血圧性脈絡膜症を認める(脈絡膜の虚血、漿液性網膜剥離)
高血圧性網膜症の原因
○本態性高血圧症
○続発性高血圧症(慢性腎不全、甲状腺機能亢進症、心疾患、副腎疾患、糖尿病)
○眼内腫瘍
○ブドウ膜炎
高血圧性網膜症の治療
高血圧性網膜症の基礎疾患となる疾患を先に探します。基礎疾患が認められた場合、高血圧に対する治療と基礎疾患に対する治療を平行して行います。基礎疾患が存在しない場合、本態性高血圧症として治療を開始します。網膜剥離が合併している場合、剥離からの時間経過とともに視覚回復の可能性が低下すると考えられています。一般的には剥離後数日内に剥離の整復が望ましいとされていますが、数週間剥離が続いてしまった後でも視覚回復ができる可能性もあるため、本疾患が疑われた場合は、まずは視覚回復を目指して適切な治療を試みることが大切となります。
治療の第一選択
○アムロジピン:0.625㎎/head 一日一回(開始量)
2日毎に血圧の測定ならびに網膜の状態、視覚の評価を行います。低血圧症(治療の副作用)に注意をしながら必要に応じて補液等行いながら最大に1.25㎎/head一日2回まで漸増していきます。
○血圧が十分に低下しない場合や長期的な予後改善の目的でACE阻害剤を併用する場合もあります。
動物も人も加齢に伴い視覚が低下していくことは自然の理として仕方のない場合も多くあります。しかし、猫といいう動物の場合、腎不全や甲状腺機能亢進症など比較的多く遭遇する疾患によって、二次的に視覚低下を起こしている場合も多く、初期段階で診断ができれば視覚の維持が可能な事もあります。加齢と判断する場合に一度動物病院を受診してみることをお勧めいたします。