看護師セミナー20 痛み・痒み・脱毛

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は痛みや痒み、脱毛など症状についてまとめております。
これらの症状は、日常的におこりうる症状ですが、原因や詳細な経路、仕組みなどを理解できていないことも多いと思います。
それらを理解した上で、看護、治療ができればと思い、学びまとめました。

 

以下内容
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臨床動物看護学 痛み

組織が傷つき刺激される時の不快感、感覚的に実際に感じたり精神的な部分に起因する痛みもある。痛みは限界を教えてくれる、命を守る最重要シグナル。動物が痛みをかかえていることに必ず気付けるわけではない。しかし傷つく、痛みを感じる事のないように最善をつくすことは出来る。

痛みの伝達方法
刺激があった部分の細胞が壊れ、発痛物質が出る。
発痛物質が知覚神経の末端に達すると刺激が電気信号に変わる。
神経細胞が反応し、脳に伝わり痛み刺激として感じる。
この時、交感神経が優位になっている。

痛みに対する誤解、基礎知識
・非ステロイド系抗炎症薬は動物用薬であれば安全に使用されている。消化器症状や腎臓代謝のため、投薬中のモニタリングは怠らない。人用薬のイヴプロフェンやアセトアミノフェンの含まれる抗炎症薬は犬猫にとって禁忌または毒性が強いので、誤って投薬してしまったり、盗食誤燕しないように注意する。
・痛みを緩和すると動くから、痛いままにするという考えがあった時代もある。活動の制限が必要な場合にはケージレストなど他の手段があるので、痛みというストレスは取り除いてあげることが重要。患者、家族のQOLを上げるためにも必要。
・麻酔薬は痛みの認識を抑制するが、無意識状態でも侵害受容は生じているため、鎮痛作用はない。全身麻酔状態で発生した痛みは、麻酔回復とともに経験されるので、麻酔中の鎮痛管理も大切である。

痛みの程度分類(外科
・軽度~中程度:下腹部の外科手術、抜歯、橈尺・脛腓骨折、耳血腫など
・中程度~重度:下顎骨切断、椎間板手術、上腹部の外科手術、上腕部骨折など
・非常に強い痛:断脚、腎臓摘出、全耳道摘出、開胸術、頚椎椎間板手術、骨盤骨折、乳房切除など
痛みの程度に合わせた鎮痛薬の選択が必要。

痛みの種類
急性痛
急性炎症や外科手術により発症する痛み。鋭い痛みで持続は短時間。
心拍数の増加、血圧上昇、呼吸促迫、激痛で血圧低下する事もある。
慢性痛
骨関節炎や癌性痛などで発症する痛み。4週間以上持続するも。
進行に伴い痛みの症状が変化する。動物も痛みに慣れる部分もあり、痛みの評価が困難な事がある。長期の変化を丹念に観察する必要性がある。

疼痛の悪影響、問題点
食欲低下、睡眠不足、抑うつ状態、代謝異常、免疫抑制などが起こることがある。
また慢性化していることで、痛みに対する感受性が高くなったり、小さな刺激も痛みとして感じるようになる。刺激が無くなった後も痛みが持続してしまうことがあり、
結果として回復能力を妨げる要因になりうる。
ただ、人の疼痛表現と異なっていたり、痛みを表現しない場合もある。
疼痛の認識と程度の判定が困難なことが多い。
自宅での判定や飼い主の訴えも重要になる。

鎮痛薬の種類
局所麻酔
プロカイン、リドカイン、ブピバカインなど
非ステロイド性鎮痛薬
メロキシカム、カルプロフェン、ロベナコキシブ、オンシオールなど
麻薬
モルヒネ、ケタミン、フェンタニル、ペンタゾシンなど

痛みの強い疾患
断脚
前後肢に発生した悪性腫瘍に対して実施、または修復不可能な複雑骨折の際に実施。
悪性腫瘍には、骨肉腫、血管肉腫、メラノーマなどが含まれる。
複雑骨折とは、骨が皮膚を突き破り外界に出ている状態の骨折。複雑骨折だけならば修復可能だが、野良猫交通事故症例などで、長期間治療が行われず骨自体や骨折下肢が壊死しかけている状態だと修復不可能と判断せざるを得ない。
断脚は大きな神経も切断するため強い疼痛を感じるので強力な鎮痛処置を行う必要がある。断脚時、神経の位置を把握してから行う。

骨肉腫
大型犬に発症が多く、セントバーナードは遺伝性発生もある。
高齢になるにつれて発生率があがる。
四肢の長骨骨幹端の骨髄腔から発生し、外に広がっていく。橈骨遠位端、上腕骨近位端での発生が多い。
初期は間欠的跛行、その後患部の腫脹、疼痛、患肢骨折をおこす。
術後の転移率が高く、肺転移が最多。治療成績は悪い。
転移が認められる場合、化学療法よりも疼痛管理を優先する。

血管肉腫
骨原発の血管肉腫はまれだが骨転移として認められ、若い大型犬で多く予後は悪い。

臨床動物看護学 痒み・脱毛

痒みとは皮膚、眼瞼粘膜、鼻粘膜におきる、引っ掻き反射を引き起こす感覚、その部位を掻く、擦るなどの行動につながる不快な皮膚の感覚のこと
痒みが発生するメカニズムは、マクロファージがアレルゲンの侵入を察知し、細胞からIgEが産生分泌されることにより、肥満細胞が刺激されヒスタミンが分泌されたことを知覚神経が反応して痒み刺激が脳に伝わることで、痒みを認識する。

痒みが出る症状は、単純に痒がるだけのもの、脱毛性、丘疹のようなもの、赤くなる、臭いが強くなる、脂漏など様々な原因があって痒くなる場合がある。
ほかにも、虫の唾液成分や細菌、カビなど体の外からのアレルゲンの侵入を防ぐために、皮膚の乾燥防止も大きな対策のひとつ。
毛に隠れて痒みの原因が見えないことがあり、許可を得て毛刈りを行うことが望ましい場合もある。特に膿皮症の場合などは毛刈りを行ったほうが治療の反応が良いことが多い。

痒みの強い疾患として、ノミアレルギー、疥癬、犬毛包虫症、膿皮症、マラセチア、食物性アレルギー、アトピー性皮膚炎 がある。
動物が痒いことによる不眠やストレスは、動物自身だけではなく、飼い主家族にも精神的な負担になることを忘れてはいけない

脱毛とは毛髪量の減少のことで、ターンオーバーを繰り返す被毛が何らかの理由で成長、発育しない状態。また毛密度が50%以下の状態。
原因は栄養不足、毛周期異常、先天性、後天性、ホルモン性などがある。
部位も全身性のものから顔のみ、四肢のみなど局所性のものなど様々な脱毛パターンがある。脱毛にも正常なものがあり、犬の腹部や品種における先天性乏毛がある。
脱毛が生命維持に影響する事はないが、見た目の問題が大きくあり、治るまでまたは継続的な飼い主のケアが重要になる。

シャンプーによる皮膚治療
シャンプーにも様々な種類があり、皮膚や疾患の状況により選択する。
シャンプーの役割は、皮膚表面の汚れの除去、余分なフケや脂分の除去、皮膚表面に付着しているアレルゲンの除去、表面の微生物の増殖抑制、水分を与え保湿する、冷やすことにより痒みの抑制 などがある。
シャンプーには犬用シャンプーや猫用シャンプー、犬猫用シャンプーなどがあるので購入、販売、説明する際には注意する。
シャンプーの種類は抗菌性シャンプー、抗真菌シャンプー、角質・溶解性シャンプー、保湿シャンプーなど皮膚の状態を判断して選ぶ。
シャンプーの手順は皮膚Ⅱ参照

代表疾患については皮膚Ⅱ参照

 

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いかがでしたでしょうか。

過去にまとめた疾患や内容については、過去参照ということで省いてあります。
症状一つ一つを理解し、看護できるように、またお家での看護のアドバイスもできるようにしていきたいと思います。

看護師 坂本恵

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