愛犬や愛猫が、食べ物以外の物(異物)を誤って飲み込んでしまったという経験をされている飼主さんは以外に多いかも知れません。大半の場合には吐き出したり、便から出たりでホッとする事が多いのですが、異物は、その形状や大きさによっては腸の途中でつまってしまい、腸閉塞へ発展する危険性をはらんでいるので注意が必要です。異物を誤って飲み込んでしまった場合、異物は以下のいずれかの経過をとります。
①食道にひっかかってしまい、食道の通過障害や食道炎の原因となる。
②嘔吐によって吐き出される。
③胃の中に留まり、胃炎の原因となる。
④胃の中から腸の中に入り、腸炎や腸閉塞の原因となる。
⑤糞便とともに外に出される。
上記のどの経過をたどるかは、飲み込んだ異物の形状、動物の大きさなどによっても様々となります。また、症状が出るタイミングや、嘔吐や糞便から排出される時期も異なるため、内科療法や外科療法、内視鏡による摘出や手術による摘出など、経過観察の期間や治療方針の決定は慎重に行う必要があるのが特徴です。
異物による腸閉塞
胃で消化されない異物のうち、比較的細長い形状のものや、先細りの形状のものは、胃を通過して腸の中に入りやすいと考えられます。小さなものであれば、腸に入った後に、スムーズに流れて糞便とともに外に出されますが、大きなものの場合には、腸の途中で動かなくなり腸閉塞を起します。
腸閉塞の症状
○元気がなく、うつろな様子。
○食欲がない。
○食べても飲んでもいないのに、何度も大量に液体を吐く。
※腸閉塞は進行すると、腸の壊死を起し、壊死部分からの細菌感染による敗血症を合併して,致死的な経過をたどってしまいます。
腸閉塞の診断
身体検査や血液検査、レントゲン検査で腸閉塞が疑われた場合、以下の方法で診断します。
○バリウム検査
バリウムを飲ませて、経時的にレントゲン写真を何枚も撮り、バリウムの流れに異常があるかを確認する検査です。
○エコー検査
腸管の中をエコー(超音波)を使用して透視することができます。腸管内に異常な内容物があるかを確認する検査です。
エコー検査の実際
画面中央の黒い部分を、シャドウと呼びます。シャドウは、腸管内の異物にエコー(超音波)が反射することで生じる扇状の影で、このようなエコー検査所見が認められた場合には、腸管内異物と診断されます。
実際の手術時の所見(画像は白黒に処理してあります)
矢印の示す正常な腸管と、その下で閉塞を起こして異常に拡張した腸管の写真です。本来であれば同じ太さ、同じ色であることからも、腸管の強いダメージが生じていることが疑われます。
異物による腸閉塞は、異物を誤飲してしまったことが目撃されていない場合や、レントゲンには写らない場合には、診断に時間がかかることもあります。気になる症状が認められた際には早めに動物病院を受診することが大切です。