シニア期を迎える犬猫においても、人同様に、脳の変性性疾患である認知症が存在するといわれています。認知症における代表的な行動変化としては、夜鳴きや排泄の失敗、攻撃行動などが挙げられます。しかしながら、これらの行動変化は、加齢や他の病気の臨床症状としても起こりうることがであり、判断に迷ってしまうことも多々ありす。
認知症の場合、動物と暮らしている環境や、飼い主の仕事の事情などによっては、その症状を慈しむべき『老化現象』として許容してあげることが良い場合もあれば、なんらかの薬物療法を選択した方がよい場合もあり、その対応はそれぞれの事情に合わせて様々です。従って、同じ症状であっても『老化』と捉えるか『病気』と捉えるかで認知症との付き合い方は異なる場合も多いといえます。
獣医学における認知症の評価方法がありますのでご紹介させていただきます。
DISHAの5兆候
見当識障害:Disorientation
・よく知っている場所での迷子
・よく知っていた人を忘れてしまう
・ドアの兆番側に向かう
・落ち着きなく歩き回る
・障害物を避けられない
社会的相互作用の変化:Socia-enviromental Interaction
・挨拶行動の低下
・なでられたり、遊ぶことへの興味の低下
・コマンドへの反応低下
・攻撃性の増加
覚醒/睡眠周期の変化:Sleep-wake cycle
・昼夜逆転
・夜中の無目的な歩行、不眠、過眠
不適切な排泄:House soiling
・不適切な場所での排泄
・失禁
活動性:Activity
・活動性の低下
・無目的な活動の低下
・食欲の増加/減退
認知症を診断する場合、これらの5つの兆候がすべて認められる場合は診断的といえますが、必ずしもすべての症状が現れるわけではなく、また、他の医学的疾患によっても起こりうる変化のため、診断には類症鑑別も必要です。
獣医師:伊藤