動脈管開存症(PDA)

2012年6月22日

動脈菅開存症とは、胎児の時に存在する動脈菅(下図の黄色い矢印)という血管の異常による心臓奇形の1つです。動脈菅は胎児の時代にしか使用しないため、通常は出生に伴ってなくなってしまう血管ですが、奇形によって出世後も存在(開存)してしまうと、全身に行くべき血液の一部が肺に戻ってしまうために、様々な臨床症状を引き起こしてしまいます。

      心臓の模式図です
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心臓における血液の流れ
 全身を回って酸素を供給してきた血液は①右心房から②右心室に入ります。右心室は肺動脈という血管に血液を流して、肺で新鮮な酸素を血液中に取り組みます。この新鮮な酸素を含む血液を全身に運ぶために、血液は再び③左心房から④左心室に入り、左心室の強い力によって⑤大動脈を通して全身に運ばれます。
 動脈菅(黄色い矢印)が開存していると、全身に行くはずの血液の一部が肺へ行く血管に入ってしまいます。この血液の流れの変化によって、全身の酸素供給が減少するばかりか、肺の血管や心臓に大きな負担がかかってしまうために、治療がなされない場合には、寿命を縮めてしまうことがわかっています。

動脈菅開存症の好発犬種
マルチーズ、ポメラニアン、シェルティー、ヨーキー、Mダックスなど

動脈菅開存症の症状
無症状から運動不耐性、咳、肺水腫、腹水、呼吸早拍など様々な症状が認められます。こうした症状が生後半年未満で現れる場合には、治療が行われない限り一年未満で命を落としてしまう可能性が高いといわれています。

動脈菅開存症の診断
上記の症状が認められた場合や、健康診断の際の心臓の聴診で本疾患が疑われます。心臓の超音波検査(エコー検査)にて確定診断が行われます。

エコー検査の実際
下図の左側は、肺に行く血管(肺動脈)を中心に抽出している画像です。この部位では、正常であれば青く染まる血流だけ存在します。本疾患では、正常な青い血流の他に、モザイク状の血流が混在しているのが確認されます。また下図の右側では、そのモザイク状の血流の性質を調べています。聴診の所見に加えて、これらの所見がそろうと、本疾患が診断されます。
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動脈菅開存症の治療
開存している動脈菅に対して、カテーテル塞栓術または外科的結紮術による動脈菅の閉鎖処置が適応となります。また進行してしまっている場合には、閉鎖処置が禁忌となるため、決定的に有効な治療方法がないものの内科療法が選択されます。

二次診療施設のご紹介
当院においては、循環器の外科手術を実施していないため、本疾患の外科治療は北海道大学獣医学部をご紹介させていただいています。

子犬なのになんとなく活力がない、他の子犬と比較してなんとなく呼吸回数が多い、ちょっとしか運動をしていないのにすぐに疲れてしまう、などの症状が気になった場合には、まずは聴診器で心臓の音をしっかりと聞いてみてもらうといいと思います。

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