雄の子犬や子猫を家に迎え入れた場合には、生後半年を過ぎる頃に、一度陰嚢(精巣の入っている嚢)を触って精巣(睾丸)の数をチェックしてみて下さい。
通常2つある精巣が、片方しかない、または両方ない場合は潜在精巣(陰睾)が疑われます。
潜在精巣の原因には、遺伝的な関与が考えられています。通常、精巣(睾丸)は、胎児の時にお腹の中で作られ、出世後にお腹の中を移動し、数週間のうちに陰嚢に降りてきますが、途中で移動が止まってしまい、陰嚢にたどり着けない場合を潜在精巣と呼びます。発生率は0.8~9.8%という報告があります。
潜在精巣に関する獣学的な見解には以下の二つが挙げられています。
○潜在精巣は、通常の精巣と比較して、精巣腫瘍になる確率が10倍以上である。
○潜在精巣の原因には、遺伝的関与が疑われることから、繁殖計画から除外することが推奨
される。
潜在精巣の症状
特に症状はありません。潜在精巣であっても多くの場合で繁殖能力もあります。また、潜在精巣が腫瘍化してしまった場合でも、進行するまでほとんど症状を確認する事ができません。
潜在精巣の診断
陰嚢の触診により診断されます。
潜在精巣の治療
手術による摘出が適切な治療方法と考えられています。術前のエコー検査によって、予め潜在精巣の位置を把握し、手術時の切開部位を決めます。予め潜在精巣の位置を確認することで切開範囲を最小限にすることが可能となります。最小限の切開によって、術後の早期回復が可能となります。
写真の円の内側は、お腹の中の潜在精巣の位置を示すエコー像です。
手術の実際(画像は白黒に処理してあります)
エコー検査によって特定した潜在精巣の位置の真上が、手術時の切開部位となります。予め計画した切開ラインに沿って、最小限の切開で潜在精巣を引っ張り出します。
最小限の切開により、術後の早期の回復が可能となります。
手術終了後の精巣の比較です。左が陰嚢内にあった正常な精巣、右がお腹の中にあった潜在精巣です。病理検査では腫瘍化は認められなかったものの、色や大きさの違いが既に顕著に出ています。
潜在精巣は、早期に対処をすることができれば、通常の去勢手術と同様に考えることができます。しかしながら、腫瘍化してしまった場合には、転移や周辺組織の巻き込みなど、治療が難しくなる場合があります。雄の子犬や子猫を迎えた場合には、お家でも是非一度チェックをしてみて下さい。