避妊・去勢手術

避妊・去勢手術

避妊・去勢の手術について

現在の獣医学の総合的な結論としては、去勢・避妊は病気の発生率を下げ寿命の延長に貢献できる措置として多くの動物病院で推奨されています。しかしながら、健康な臓器を摘出することに対する悩みや、手術のメリット/デメリット、また手術適期が生後5か月(大型犬は10か月前後)とまだ幼い時期に当たるなど、手術の決定はご家族と愛犬、愛猫にとっての初めての試練となるとも言えます。当院では肉体的な負担軽減(安全な麻酔、適切な疼痛管理)にとどまらず、さまざまな工夫を取り入れながら愛犬、愛猫の精神的な負担の軽減を大切に考え行動しています。
術前の検査時や飼い主の方々からの聴取をもとに愛犬、愛猫の性格に合わせた工夫を行いながら、可能な限り手術が恐怖体験とならないよう努めています。
手術に対してご心配な点やご質問がある場合はお気軽にご相談ください。

手術を決める前に知っていただきたい
こと

メリット

雌:子宮蓄膿症
発生率:7歳以上で30%前後
犬猫ともに幅広い年齢層でみられますが、平均8歳前後で発症する病気です。
細菌が感染する事で子宮内に膿がたまる疾病です。
発見・治療が遅れると敗血症などにより死に至る病気です。
ヒート後8週間前後に多飲多尿や元気、食欲の低下などが認められたら注意が必要です。
 
避妊手術を行うことで、予防できる病気です。
雌:乳腺腫瘍
中高齢の犬猫に発生する病気です。
乳腺腫瘍は良性の場合もありますが、犬では約50%、猫では役80%が悪性腫瘍(癌)といわれています。
乳腺腫瘍の発生率の調査では、
初回発情前に避妊手術を実施した群では、その発生率は0.05%に、
初回発情後に避妊手術を実施した群では、その発生率は8%に、
2回以上発情後に避妊手術を実施した群では、その発生率は26%という報告がなされています。(Schneider,R.et al. J.Natl.Cancer Inst.43,1249-1261,1969)
乳腺腫瘍の予防という観点では、早い段階での避妊手術が推奨されています。
ただし、大型犬においては骨格の成長のためにも1歳前後の避妊手術が選択される場合もあります。
雄:前立腺肥大症
中高齢で発症する病気です。
無症状の場合もありますが、膀胱の後ろにある前立腺が大きくなることで周囲を圧迫し、血便・血尿や排便・排尿障害などの症状を引き起こします。
去勢手術を行うことで、予防出来る病気です。
雄:会陰ヘルニア
中高齢で発症する病気です。
直腸を支える筋肉群が弱くなり、腸管や膀胱などが肛門の周りの皮下に脱出する病気です。脱出する臓器によっては、死に至る事もあります。
精巣から分泌される性ホルモンが関与していると言われ、去勢手術を行うことでほとんどの場合予防が出来ます。
雄:肛門周囲腺腫
高齢でよく発症する腫瘍です。
肛門周囲に発生する事が多いですが、尾や腹部やその他の部位でも発生することがあります。良性のものは、精巣から分泌される性ホルモンが関与していると言われ、去勢によって予防出来ます。去勢していても発生する場合は悪性腫瘍(癌)の疑いが高くなります。また、まれに雌でも発症することがあります。
雄:潜在精巣
精巣が陰嚢の中になく、お腹の中や下腹部皮下に留まっている状態です。遺伝性疾患と考えられ、繁殖には適しません。加齢とともに腫瘍化する傾向にあります。去勢手術によって、予防する事が出来ます。

デメリット

麻酔のリスク
避妊・去勢手術は全身麻酔を必要とします。
健康な犬猫の麻酔リスクは、約0.05%と言われています。
また、麻酔薬に対して特異体質(アレルギー)もあり、全身麻酔は短時間であっても十分に慎重に行う必要があります。
肥満
手術後に肥満傾向になることがあります。
手術後の基礎代謝率が減少する事により、カロリーの消費量が減るためです。
一定量の食事を規則正しく与え、適度な運動をする事で予防することが出来ますが、カロリーを抑えた避妊・去勢手術後に与える専用のフードもあり、肥満防止を図る事が出来ます。
尿失禁
加齢に伴い表れることのある尿失禁症状が、手術によって早期に現れる事があります。尿道の筋肉が緩むことでリラックス時や過度の興奮時に尿が漏れてしまう事があります。性ホルモンが括約筋の収縮に関与しているためです。症状は、一過性、持続性、また術後数年以上経過してから等、様々です。多くの場合で服薬による管理が必要となります。
縫合糸の副反応
手術に使用する縫合糸に対する過剰反応により、縫合糸反応性肉芽腫というしこりが出来ることがあります。ラブラドールやミニチュアダックスフント等の犬種で多く見られ縫合糸周辺に肉芽腫ができたり、皮下組織に排液が貯まることがあります。これは免疫が関与していると考えられていますが、その原因については証明されていません。上記犬種に関しては、予め特殊な縫合糸を使用することで発生率を下げることができます。
その他の問題
大型犬の骨肉腫などの悪性腫瘍や甲状腺機能低下症などの疾患は、去勢・避妊していない群と比較して、去勢・避妊している群の方がその発生率が高いという報告もなされています。しかしながら同時に、去勢・避妊していない群の方が発生率の高い疾患も多くあり、結論としては去勢・避妊をすることによって総合的には病気の発生率を減じことで、寿命の延長効果があるとの獣医学的解釈がされています。

手術の流れ

事前の説明

手術前には、ご来院いただき、愛犬・愛猫の健康状態を詳しく確認するための身体検査(問診・視診・触診・聴診)、血液検査、必要に応じてレントゲン検査、エコー検査を行います。手術当日までの流れや、手術内容、麻酔についても丁寧にご説明いたします。

手術前日及び当日

前日の21時以降は食事を控え、当日の朝6時以降は絶水でご来院ください。手術当日は11時までにご来院いただき、お預かりに関する確認事項のご説明をさせていただきます。

手術と術後

避妊・去勢手術は、当日中にご自宅へお連れいただける日帰り手術です。
手術当日は、夕方5時~6時頃のお迎えをお願いいたします。
術後10〜14日目の抜糸までは、エリザベスウェアまたはエリザベスカラーを着用してお過ごしください。傷口を舐めないようにご注意ください。

術後ケア

術後10日前後は排泄のための最小限のお散歩にとどめ安静に努めてください。通常、傷口を舐めないよう工夫する以外は特別なご自宅でのケアは不要です。傷口から出血があったり腫れて気にする様子がある等、気になる様子があった場合にはお早めにごら来院ください。また術後2週間はシャンプーは避けていただことを推奨させていただいております。

避妊・去勢手術の長所

  • 性ホルモンに関連する病気を未然に防ぎ、愛犬・愛猫の健康寿命を延ばすことができます。
  • 発情期のストレスから解放し、穏やかな毎日を送ることができます。
    マーキングや攻撃性といった問題行動も改善される可能性があり、快適な暮らしが期待できます。
  • 性ホルモンに関連する行動特性が減じることによって、人との関りや絆を深めることに役立ちます。

避妊・去勢手術の短所

  • 手術後、代謝が変化し、体重が増えやすくなることがあります。
  • 適切な食事量と運動を心がけることで、健康的な体重を維持できます。
  • まれに、避妊手術後、尿漏れが見られることがあります。
    これは、ホルモンバランスの変化が原因と考えられており、多くの場合は一時的なものです。
  • 手術の際に使用する縫合糸が原因で、まれに肉芽腫という腫瘍ができることがあります。肉芽腫の好発犬種に対しては専用の縫合糸を使用することで大幅にその発生率を下げることができます。
web予約