腎臓で作られた尿の中のミネラル成分が、時間をかけて少しづつ固まって大きく成長することで腎結石は発症します。腎結石は年数をかけて徐々に成長しますが、動物の場合、末期となるまであまり症状を出すことがありません。そのため、他の検査の際などに偶発的に発見されることが多いのが特徴の一つと言えます。症状が出るようになった段階では、治療が出来ない場合が多く、早期発見早期治療が大切な疾患の一つです。
尿路系(腎臓や尿管、膀胱など)に出来る結石のおよそ1~4%が腎結石といわれています。
発生頻度は低いものの、膀胱内で生じやすい結石と比較して、内科療法で溶解しづらいという
特徴があります。
腎結石症の症状
末期になるまであまり症状を示しません。結石の大きさが腎臓の許容量を越えると、
強い痛みによる振るえや食欲不振、腎不全や細菌性腎盂腎炎などの合併によって
致死的な経過をとります。
症状があまりでない理由
腎結石が存在していても、石が一定の大きさ以上になるまでは、尿が石の合間を縫うように流れるため、尿の通過障害による症状が認められません。ひとたび尿の通過障害が生じてしまうと、腎機能不全が始まりますが、腎臓という臓器は、75%以上の機能が低下しないと症状を出さないため、症状が出てしまった時には非常に重篤となっていることが殆どです。
腎結石症の診断
レントゲン検査で発見し、超音波検査で結石以外の疾患の鑑別を行います。
腎結石症の治療
一定期間の内科療法に反応がなく、腎機能が正常な場合には手術による腎結石摘出術が適応となります。
腎機能の評価には、血液検査、尿検査、静脈性尿路造影検査が必要となります。
静脈性尿路造影検査
特殊な造影剤を静脈内に注射して、腎臓からの尿の流れをレントゲン検査でわかるようにする検査です。矢印のところで白く線上に見えるのが、造影された尿管です。この検査によって、腎臓、尿管、膀胱においての尿の流れを調べていきます。
手術の実際
腎動脈と腎静脈をそれぞれ血管鉗子という特殊な道具でとめて、腎臓内の血流を一時的に遮断します。遮断可能時間は15分前後といわれ、その間に腎結石の除去、尿管の洗浄、閉創を全てを実施します。チームワークが重要となる手術の一つです。
結石を取り出しているところです。腎臓の大きさと比較して、非常に大きな腎結石です。
取り出された腎結石です。摘出後、結石の分析検査を行うことで、再発の予防が可能かを調べることができます。
腎結石症は、比較的高齢で発見される場合も多く、手術を含めた治療方針の決定には、悩むことの多い疾患の一つといえます。一般状態や腎機能の評価を詳細に行いながら、手術をするメリット、デメリット、手術をしないメリット、デメリットをよく相談し、方針を決定していくことが大切と思います。