看護師セミナー

こんにちは。看護師の坂本です。
今月から始まる文部科学省委託事業の動物看護士および動物系職業人向け学び直し実証講座(全24回)に参加をさせていただく事になりました。専門的な内容になるので難しいところもあると思いますが、学んできた事をまとめましたので皆さんにもお伝えさせていただきます。(大切なわんちゃん、ねこちゃんのため少しでも力になれればと思います。)

座出席のため、夕方17時以降の看護師の人数が減ってしまうため、待ち時間等でご迷惑をおかけすることがあるかと思いますので、予めお詫び申し上げます。

一回目は口腔学Ⅰということで主に口腔内の構造や機能についてまとめてみました。

 口腔内の構造,機能,しくみ

①舌
・消化運動,嚥下運動動かすことにより食べ物を咽頭へ運び嚥下する。
・嚥下運動には随意的に動かせる段階とそれに続く不随意的段階がある。
このように舌の前面以外は自分でコントロールすることが出来ない。なので、経口投薬時に舌の奥の方にお薬を乗     せる。そうすると、本人の意志とは関係なく呑み込んでしまうので口を開けてくれる子は、簡単に投薬が出来るとされている。

・味覚
味らいという構造部分で酸味,甘味,苦味,塩味がわかる。味らいの数は動物の種類で異なり、人は10000個以上と言われているが犬で1700個、猫で500個と言われている。なので、犬や猫は味を楽しむというより主に、有害物質の存在の判断をしていると言われている。

・体温調節機能
舌を湿らせることで熱を放散させている(主に犬)

②唾液線
唾液線には耳下腺、顎下線などを代表とする大唾液線,口唇線などの小唾液線の2種があり、唾液には免疫グロブリンが含まれる。唾液の機能としてはプチアリンによるでんぷん(炭水化物)の消化作用(人のみ)

・口腔内の湿潤作用
乾燥状態が続くと口腔内からの疾患の感染が成立してしまう。犬の場合は体温調節のためにも必要。

・食物の軟化作用と粘膜の保護作用
・リゾチームによる殺菌作用
・フッ素による虫歯予防

③口腔内リンパ
口腔内にもリンパ節は存在しており、口腔から咽頭にかけてリンパ組織がある

④口腔内軟部組織
歯肉,舌,軟口蓋,硬口蓋などがある

⑤歯
動物により歯の数や形は異なる。

歯の構造
・歯冠
歯肉から上に出ている部分を歯冠と呼ぶ。
・エナメル質
口に入った食べ物を飲み込むために裂いたり噛み砕いたりするため、身体の中で一番硬い組織であるエナメル質が一番外側の層として出来ている。95%以上がリン酸カルシウムで構成され、知覚はない。破折しても修復力はなく、加齢により表面が摩耗する。硬いものを咬む子は若齢でも摩耗し露髄する事がある。
・象牙質
エナメル質の中で歯髄を覆う組織で、コラーゲン組織とリン酸カルシウム結晶により構成されている。修復機能がある。
・歯髄
神経,血管,リンパ管が通っている組織。破折などにより歯髄が露出することを露髄と言う。露髄した状況を放置すると、歯髄炎や歯髄壊死を起こすこともある。
・歯根
歯冠から下、歯肉に覆われた部分の事を歯根と呼ぶ。
・歯周辺組織
・セメント質
骨に似た組織で歯根部の象牙質を覆う。
・歯根膜
歯が受けた刺激が直接歯槽骨に伝わらないように衝撃を緩和する機能がある。実際は膜ではなくコラーゲン線維(靭帯)によって歯と骨をつなぐ。
・歯槽骨
歯を支えている頭蓋骨の一部。

歯の種類
・切歯
一番前の歯。
・犬歯
最も長い歯。上顎下顎に2本ずつ計4本ある。犬より猫の犬歯の方が尖って細い。
・前臼歯、後臼歯
犬歯から後ろにかけてある歯。

口腔構造は、口腔→咽頭→食道への消化器系構造と、口腔→喉頭→気管への呼吸器系構造の2系統の重要な役割を担っている。このため口腔内を健康を維持する事は非常に重要である。

・歯の数
犬で合計42本
猫で合計30本

口腔内診療問診ポイント

3歳以上の犬猫の80%以上が歯周病をもっているとされているが、飼い主が気付いていない事がほとんどである。大型犬よりは小型犬の方が発症しやすく進行も早い。犬猫の行動を観察または問診で歯科疾患を疑うべき症状口が臭い、食べ物を残すようになる、食べたそうだが食べない、顔を触られるのを嫌がる、くしゃみをする、前肢で顔や口を擦るなどがあげられる。また同居動物の有無や、食物の内容、飼育環境などを問診し感染症や食物による口腔内の負担がないかなども確認しておく必要がある。

上記のような症状は他の疾患でも見られる行動なので必ずしも歯科疾患とは限らないが、考慮には入れておくべきである。言葉を発する事が出来ない動物達が違和感を抱えているサインを逃さないようにすることも動物看護士の重要な仕事である。

いかがでしたでしょうか?

今回は構造の名前など専門的な用語が多かった口腔学Ⅰですが、今後口腔学Ⅱという歯科疾患についての検査や原因治療対策などが学べる予定です。今後も参加したものをまとめてお伝えしていこうと思いますので興味をもたれた方は楽しみにしていていただければと思います。何か気になる事がありましたらいつでもお気軽にお問い合わせください

              

看護師 坂本恵