2018年癌学会所感

癌細胞だけを認識して破壊する新しい抗癌治療である抗体医薬の認可が、人医領域で加速度的に成長をしています。効果があるものの副作用もある従来の抗癌剤の新規開発は急速に減退し、人医領域ではおよそ90%が抗体医薬を含むがん免疫治療の分野に集中するようになっているそうです。この新しい領域への獣医療の試みはまだまだ始まったばかりです。抗体医薬の作用メカニズムの一部は解明されつつあるものの、人医においても、まだまだ分からない事も多い分野です。また、従来の抗癌剤の副作用とは異なる副作用の報告が多数されており、決して副作用のない夢の抗癌治療薬ではないことも忘れてはいけない事実だと思いました。現在、獣医療における抗体医薬分野では、2つの製剤が誕生しているものの臨床的に有効とは言えておりません。しかし、この新しい癌治療の開発に向けて多くの研究が進められており、近い将来、これまでに太刀打ちができなかった癌に対して、治療を受けるコにもその飼主さんにも優しく、そしてより効果的な治療ができるようになる日が近づいているという印象を強く受けることができた学会でした。 

獣医師:伊藤