〜抗がん剤感受性検査について〜
近年、犬や猫におけるがん治療として抗がん剤や分子標的薬による薬物療法が広く行われるようになってきました。とくに他の抗がん剤と比べ副作用がマイルドな分子標的薬の登場により、飼い主の方々の抗がん剤に対する印象が少しずつ変わってきているように感じることもありますが、まだまだ抗がん剤=副作用でつらいという認識が一般的です。がんを患っている子になるべく治療で苦しませることなく、負担の少ない治療をしてあげたいと願うのは、私も一飼い主として同じ思いで日々の診療にあたらせていただいています。
しかし抗がん剤には抗がん剤にしかない治療役割があり、薬の副作用というリスクを担保にがんによるつらい状況を回避できる可能性や、抗がん剤治療が最も効力を発揮するがんも存在することから、動物のがん治療においては中核を担う治療法といえます。とはいえ、やはり抗がん剤の副作用は飼い主の方々にとっても我々獣医師にとっても最大の問題点となります。
そんな中、獣医療においてもついに抗がん剤感受性検査が実施できるようになったためご紹介させていただきます。
抗がん剤感受性検査とは、手術や検査にて摘出したがん組織の一部を培養したものに各種抗がん剤処理を実施し、その感受性を調べる検査です。つまり、試験管内で培養増殖させた個々のがん細胞に対し抗がん剤を投与して、各抗がん剤のそれぞれの効果を実際に抗がん剤を投与する前に調べることができる検査となります。これにより治療開始前にその子のがんに有効な抗がん剤を予測することが可能となります。
抗がん剤感受性検査のメリット
現在、個々のがんに対する有効性を示した報告に基づき抗がん剤の選択が行われていますが、がんの種類によっては十分な有効性が認められないものも多く存在しています。また、同じ抗がん剤でも個体間で感受性に大きな差があることも知られています。感受性検査を行うことで感受性の高い抗がん剤を選択することができ、より負担の少ない抗がん剤治療の計画ができます。
また、抗がん剤感受性検査では、がんに対し感受性のある抗がん剤の適切な濃度を判定することが可能であり、結果に基づき抗がん剤の投与量を少なくできる場合があります。これにより副作用の少ない抗がん剤治療が計画できます
抗がん剤感受性検査の適応
〇抗がん剤治療開始前に有効性のある抗がん剤について知りたい
〇抗がん剤治療が必要だが副小夜アウガ怖く躊躇してしまう場合
〇現在抗がん剤治療中だが効果が乏しい場合や再発してしまった場合
〇がんに対して手術や放射線治療を提案されたが長時間の麻酔が難しい場合
現在ご不安を抱えながら抗がん剤治療を実施中の方、またこれから抗がん剤治療をご検討の方には、少しでも苦しみの少ないがん治療の一助に、当院では抗がん剤感受性検査は強くお勧めできる検査と考えております。
詳しく知りたい方はどうぞお気軽にご相談下さい。
獣医師:野上