犬と比較して猫はフィラリア症にかかりづらいというのがこれまでの通説ですが、実際に例えフィラリアの感染を受けたとしても高率に免疫系によって駆除される事が知られています。
しかし、免疫系を免れて感染が成立する事例は猫でも報告があり、予防の必要性に関しては長らく獣医師間でも議論されてきました。発症すると、呼吸器症状、嘔吐や食欲不振、突然死などを起こす疾患ではありますが、特に北海道のようにフィラリア症発症例の少ない地域では、発症の初期の段階からフィラリア症を積極的に疑う事が難しく、治療が遅れる可能性がある疾患という特徴があります。
1997年の日本猫フィラリア予防研究会の報告では、日本における猫フィラリア抗体陽性率は、全国平均12.1%、北海道では9.5%でした。1997年以降の大規模は疫学調査を見つけることはできないのですが、平均気温と感染率が相関するフィラリア感染においては、温暖化傾向の現在ではもう少し多いかもしれません。
上記調査は抗体検査ですので、フィラリアが体内に入ってきて免疫系で駆除した結果をみているだけであり、感染が成立した率を示しているデータではないのですが、もしも免疫系が駆除に失敗したら感染が成立する事を考えると、温暖化傾向の現在、猫はフィラリア症にかからないと断言するのも難しくなるかもしれません。
担当のメーカーさん曰く、すでに関東圏の動物病院の6割で猫のフィラリア症の予防を開始しているという事で、まだ予防率が1割に満たない北海道のこれからの在り方を考えさせられるこの頃です。
当院では、札幌という地域におけるデータがまだ十分ない事を理由に猫のフィラリア予防の必要性を『必須』という段階には決定できていないのでが、予防ニーズの増加に伴い予防薬の処方が可能な体制をとっています。飲み薬が苦手な子には、スポットタイプ(背中につけるタイプ)の薬剤もあります。詳しくは担当の獣医師または看護師にお気軽にお聞きください。
厚別中央通どうぶつ病院