慢性で軽度の血便や軟便を繰り返している場合、大腸の炎症性ポリープを疑って
みる必要があります。炎症性ポリープとは、近年、ミニチュア・ダックスフンドで好発する
といわれるようになっている大腸のポリープ疾患で、慢性的な血便、軟便をはじめとした
排便困難を主症状とする疾患です。
ポリープは、肛門付近に発生すると触診で発見できますが、指で届かない部位に生じると、
発見が難しくなります。そのため、初期診断が難しい病気の1つといわれています。
炎症性ポリープの原因
現在のところはっきりとした原因は解明されていません。しかしながら、免疫疾患の発生が
多いミニチュア・ダックスフンドに好発することから、免疫メカニズムの異常がこの病変の
発生に関与していることが示唆されています。
炎症性ポリープの診断
再発性の血便や軟便を呈した場合、血液検査、レントゲン検査、エコー検査によって
各種疾患を除外した後に、全身麻酔下での大腸カメラによって発見し、組織を採取します。
採取した組織を病理検査することで本疾患が診断されます。
診断の実際
大腸検査にて発見された複数のポリープ所見です。
炎症性ポリープの治療
初期には内科療法を試みます。軽度の場合、食事療法ならびに内科療法によって
縮小を示す場合があります。しかしながら、多くの場合で、再発をしてしまうことがあります。
そのような場合には外科療法を選択する必要があります。
外科療法には下記に示す各種方法がありますが、大腸という繊細な臓器を操作するため、
いくつかの重大な合併症も報告されていることから外科手術の選択にあたっては慎重な
判断が必要となります。
主な外科手術
・単発性の場合は、内視鏡下による切除が可能です。
・複数であまり奥に位置していない場合には、直腸粘膜引き抜き術(プルスルー術)が
適応となります。
・複数で広範囲に生じている場合には、直腸全切除および人工肛門造設が必要となります。
外科手術の実際 (画像は白黒に処理してあります。)
写真は、プルスルー術を示します。
肛門の周囲に糸をかけて、直腸粘膜を剥離しやすい状態にします。
ポリープを含んだ直腸粘膜の全周を肛門の外側へ引き出して、
切除する範囲を決めます。
直腸粘膜を切除した後、肛門周囲の筋肉と直腸粘膜を縫合して
手術を終了します。
術後3ヶ月経過した時の、大腸カメラから観察した直腸粘膜です。
再発もなく経過は良好です。
慢性的に繰り返す血便や軟便という症状が気になった場合、一度、大腸のポリープを
はじめとした疾患を考えてみることが大切です。診断には、全身麻酔下の大腸カメラが
必要となりますが、短時間で意義のある所見が得られることがあります。
またポリープのガン化の報告もされていることから、早期発見、早期治療が大切な疾患の
1つと思われます。
気になる症状があった場合には、健康診断を兼ねて大腸カメラの検査を受けていただくことを推奨します。