病院の症例

大腸の炎症性ポリープ

慢性で軽度の血便や軟便を繰り返している場合、大腸の炎症性ポリープを疑って
みる必要があります。炎症性ポリープとは、近年、ミニチュア・ダックスフンドで好発する
といわれるようになっている大腸のポリープ疾患で、慢性的な血便、軟便をはじめとした
排便困難を主症状とする疾患です。
ポリープは、肛門付近に発生すると触診で発見できますが、指で届かない部位に生じると、
発見が難しくなります。そのため、初期診断が難しい病気の1つといわれています。

 炎症性ポリープの原因
現在のところはっきりとした原因は解明されていません。しかしながら、免疫疾患の発生が
多いミニチュア・ダックスフンドに好発することから、免疫メカニズムの異常がこの病変の
発生に関与していることが示唆されています。

 炎症性ポリープの診断
再発性の血便や軟便を呈した場合、血液検査、レントゲン検査、エコー検査によって
各種疾患を除外した後に、全身麻酔下での大腸カメラによって発見し、組織を採取します。
採取した組織を病理検査することで本疾患が診断されます。

診断の実際
     大腸検査にて発見された複数のポリープ所見です。  

     2013-09-17 20;53;19  内視鏡下病変

炎症性ポリープの治療
初期には内科療法を試みます。軽度の場合、食事療法ならびに内科療法によって
縮小を示す場合があります。しかしながら、多くの場合で、再発をしてしまうことがあります。
そのような場合には外科療法を選択する必要があります。
外科療法には下記に示す各種方法がありますが、大腸という繊細な臓器を操作するため、
いくつかの重大な合併症も報告されていることから外科手術の選択にあたっては慎重な
判断が必要となります。

主な外科手術
・単発性の場合は、内視鏡下による切除が可能です。
・複数であまり奥に位置していない場合には、直腸粘膜引き抜き術(プルスルー術)が
 適応となります。
・複数で広範囲に生じている場合には、直腸全切除および人工肛門造設が必要となります。

外科手術の実際 (画像は白黒に処理してあります。)
     プルスル1
     写真は、プルスルー術を示します。
     肛門の周囲に糸をかけて、直腸粘膜を剥離しやすい状態にします。

     プルスル2
     ポリープを含んだ直腸粘膜の全周を肛門の外側へ引き出して、
     切除する範囲を決めます。

     プルスル3
     直腸粘膜を切除した後、肛門周囲の筋肉と直腸粘膜を縫合して
     手術を終了します。

     2013-09-17 20;51;17
      術後3ヶ月経過した時の、大腸カメラから観察した直腸粘膜です。
     再発もなく経過は良好です。

慢性的に繰り返す血便や軟便という症状が気になった場合、一度、大腸のポリープを
はじめとした疾患を考えてみることが大切です。診断には、全身麻酔下の大腸カメラが
必要となりますが、短時間で意義のある所見が得られることがあります。
またポリープのガン化の報告もされていることから、早期発見、早期治療が大切な疾患の
1つと思われます。

気になる症状があった場合には、健康診断を兼ねて大腸カメラの検査を受けていただくことを推奨します。

椎間板ヘルニア

背骨の中には、脳からの指令を手足に伝えたり、手足の感覚を脳へ伝えるために
働いている脊髄神経があります。この脊髄神経は、とても重要な神経のため下記
のような構成によって厳重に守られています。

背骨:筒状の骨格で脊髄神経を納めてます。外からの衝撃から直接神経を守ります。
 椎間板:背骨と背骨の間に存在します。背骨にかかった衝撃を吸収する役割をします。
 筋肉:背骨と背骨を柔軟かつしっかりと連結させ、構造を保ちます。

椎間板ヘルニアとは、遺伝的要因または加齢による影響で、椎間板の変形や突出
が生じ、脊髄神経を圧迫することで発症します。脊髄神経に対する、圧迫の強さに
よって様々な程度の神経障害を起こします。重度で無治療の場合、多くが永続的に
歩行困難な状態となってしまいます。

好発犬種と年齢
一般的には、軟骨異栄養性犬種(ミニチュアダックス、シーズー、ビーグルなど)で多発
する傾向がありますが、どの犬種であっても発生します。軟骨異栄養犬種においては、
生後1~2歳の段階から既に椎間板の変性が始まる事が知られています。特徴として、
ミニチュアダックスは3~7歳時に胸腰部に、ビーグルは若歳時から頚椎に、シーズーは
高齢時に頚椎や腰胸部に発生する傾向があります。

椎間板ヘルニアの症状
重症度により異なります。軽度の場合には、なんとなく動きが悪い、背中を丸めて震え
ている、ソファやベットの上にジャンプしたがらない等という痛みが中心の症状から
表れます。進行するにしたがい、足がもつれたり、フラフラと歩くようになります。重症と
なると歩行不能、感覚の消失等の症状が表れるようになります。

椎間板ヘルニアの診断
症状や身体検査所見によって本疾患が疑われます。確定診断はCT検査で行います。
脊髄造影という検査方法で椎間板ヘルニアを診断する方法もありますが、もしも手術
になってしまった場合には、詳細で正確な診断が求められることから、当院ではCT検査
を利用しています。CT検査は、正確な解析を行える獣医師が在籍する大学病院を利用
させていただいています。

CT検査の実際
1週間前の散歩中にギャンと鳴いて震えだしてから、後ろ足がフラフラするようになり、
2日前から後ろ足が立たなくなってしまった、ミニチュアダックスの男の子のCT像です。
左のCT像の矢印が示す丸い部分が脊髄神経です。右のCT像では、白い物質(椎間板
物質)によって脊髄神経が圧迫されている様子が描出されています。
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上記の写真を3D化し、手術に必要な詳細な情報を得ることが可能となります。
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酪農学園大学大学病院提供

椎間板ヘルニアの治療
内科療法
脊髄神経への圧迫により生じる炎症やフリーラジカルという酸化物質から、脊髄神経を保護することを目的とした治療です。圧迫そのものの解除はできませんが、軽度の椎間板ヘルニアであれば外科療法と同等の治療効果があります。しかしながら、治療効果がすぐに表れないため、治療効果判定に時間がかかったり、治療効果が出た場合であっても、およそ30%で再発するというデメリットがあります。

外科療法
直接の圧迫原因となる、変性した椎間板物質を手術により除去します。非常に重度の圧迫でなければ、内科療法と比較して、早期の回復および完治が期待できます。しかしながら、重症例では治療効果が決して高くないことや、術後も他部位での椎間板ヘルニアの発生は起こり得るなどのデメリットもあるため、慎重な選択が求められます。

手術の実際
    神経外科ではより完全な消毒が求められます。通常の術野消毒を行った後に、
特殊なフィルムを皮膚に貼り付けてから手術が開始されます。
DSCF3258
CT検査に基づいて、圧迫を受けている部位の背骨に、ドリルを用いて小さな穴を
開けるように骨を削っていきます。この際に、ドリルによる過度の振動や熱が神経に
伝わらないように注意することが大切となります。
DSCF3271
脊髄神経に到達したら、圧迫部位を確認していきます。黄色矢印の部位で神経の
圧迫が認められます。この圧迫を起こしている椎間板物質を慎重に除去して手術
は終わりとなります。
DSCF3280
除去された椎間板物質の写真です。これで神経への圧迫が解除されます。
DSCF3284

椎間板ヘルニアの発症は急であることが多く、治療方法の選択(内科療法、外科療法)も早急に決定する必要がある場合が多くなります。また、様々な程度の症状を呈する本疾患においては、治療効果もそれぞれの症状によって異なります。治療効果が出るまでに1ヶ月以上の時間を要することも度々あり、辛抱強い治療や看護が大切な疾患です。同時に、CT検査を正確に行える施設が限られていたり、適切な治療が行われたのに関わらず、軽度から中等度の症状であっても10~20%で、重度の場合では、半数以上で歩行機能障害または歩行困難が後遺症として残ってしまうことがある、とても怖い疾患の一つです。万が一、本疾患に罹患してしまった場合には、様々な課題に対して、慎重な検査治療計画を相談しながら立てていくことが大切です。

大腿骨頭壊死症(レッグ・ペルテス病)

成長期の子犬が、痛がる様子をあまり見せずに、足を浮かせて歩いたり、なんとなく足をかばって遊んだりしている場合には、大腿骨頭壊死症を原因の一つとして疑う必要があります。大腿骨頭壊死症(以下、レッグ・ペルテス病)とは、大腿骨の先端(大腿骨頭)への血液供給が障害される結果、大腿骨頭の成長障害が生じ、骨の変形・崩壊が生じてしまう疾患です。大腿骨頭はやがて病的骨折を起こし、股関節の硬直や疼痛が永続的に現れるようになります。主にトイ種やミニチュア種の4ヶ月齢から1歳頃までに発症することが多いと言わる股関節の病気です。

 レッグ・ペルテス病の原因
明確な遺伝物質は発見されていないものの、現在のところ遺伝疾患と考えられています。好発犬種にはテリア系、ポメラニアン、ペキニーズ、プードル、ミニチュア・ピンシャー、パグ、ダックス、シェルティー、コッカースパニエル等が含まれます。

レッグ・ペルテス病の症状
初期
なんとなく足をかばって歩く。歩幅が狭いなどの症状から、次第にはっきりとした歩行障害へ         と少しずつ悪化。
慢性期
筋肉の萎縮、慢性的な破行が現れます。破行の程度には個体差があります。

レッグ・ペルテス病の診断
犬種、年齢、臨床症状より本疾患を疑います。典型的にはレントゲン検査にて、大腿骨頭の異常が認められます。しかしながら、発生初期にはレントゲン検査での異常所見が乏しく、また、本疾患の好発犬種では、膝の先天性疾患が多いことから、初期の診断が難しい場合があります。そのため、成長期の子犬で、足をかばうような歩様が続く場合には、繰り返しレントゲン検査を実施することが重要となります。確定診断には、病理検査が必要な疾患です。

検査の実際
一ヶ月かけて少しずつ足をかばう歩行が顕著になってきた10ヶ月のミニチュアダックスの
レントゲン写真です。

DSCF3057 e
左右の股関節のレントゲン写真を拡大して、コントラス調節すると異常が明確に描出されます。
DSCF3054q d DSCF3049 a
右側の股関節の写真では、中央部の骨がスカスカ、モアモアと変化しているのがわかります。この所見が認められた場合、本疾患が強く示唆されます。

レッグ・ペルテス病の治療
レッグ・ペルテス病の臨床症状は様々であり、状況に応じた治療選択が必要になります。症状が軽度な段階では、抗炎症剤による内科療法と、運動制限によって一部の例で改善を認める事もありますが、大半が進行してしまい、残念ながら手術が必要になります。外科手術では直接の痛みの原因となっている大腿骨頭(股関節と関節する部位)を切除する大腿骨頭切除術を実施します。適切な時期に手術を行えば、通常は残った骨と臀部の筋肉で、関節様の構造を形成し、正常な歩行が可能となります。

手術の実際
臀部の外側から切開をして、大腿骨頭(写真中央の丸い部位)にアプローチします。
この際、筋肉の切開を最小限に留めることが、術後の早期回復に重要といえます。
DSCF3031 c
実際に切除した大腿骨頭の写真です。通常は平滑は表面であるのに対して、たくさんのひび割れ構造となっているのが本疾患の特徴です。
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レッグ・ペルテス病の予後
予後は様々です。術前の状態、術後管理によって大きく左右されます。術前の状態と比較して、患肢の機能は改善されますが最大で50%の症例で様々な程度の破行が残ります。特に、術前に負重が認められない場合や、筋肉の萎縮が重度に進行した場合は、機能回復が認められない場合があります。また、雨天時や激しい運動の後、しばらく運動をしていなかった後などに、軽度の破行が一時的に生じる場合もあります。

本疾患は初期の診断が難しいという特徴があります。特に成長期の子犬で、持続的に後ろ足の歩様異常が出ている場合には、本疾患を鑑別疾として考慮して、繰り返しレントゲン検査を受けることがとても大切であると考えられます。

動脈管開存症(PDA)

動脈菅開存症とは、胎児の時に存在する動脈菅(下図の黄色い矢印)という血管の異常による心臓奇形の1つです。動脈菅は胎児の時代にしか使用しないため、通常は出生に伴ってなくなってしまう血管ですが、奇形によって出世後も存在(開存)してしまうと、全身に行くべき血液の一部が肺に戻ってしまうために、様々な臨床症状を引き起こしてしまいます。

      心臓の模式図です
      6 ページww
心臓における血液の流れ
 全身を回って酸素を供給してきた血液は①右心房から②右心室に入ります。右心室は肺動脈という血管に血液を流して、肺で新鮮な酸素を血液中に取り組みます。この新鮮な酸素を含む血液を全身に運ぶために、血液は再び③左心房から④左心室に入り、左心室の強い力によって⑤大動脈を通して全身に運ばれます。
 動脈菅(黄色い矢印)が開存していると、全身に行くはずの血液の一部が肺へ行く血管に入ってしまいます。この血液の流れの変化によって、全身の酸素供給が減少するばかりか、肺の血管や心臓に大きな負担がかかってしまうために、治療がなされない場合には、寿命を縮めてしまうことがわかっています。

動脈菅開存症の好発犬種
マルチーズ、ポメラニアン、シェルティー、ヨーキー、Mダックスなど

動脈菅開存症の症状
無症状から運動不耐性、咳、肺水腫、腹水、呼吸早拍など様々な症状が認められます。こうした症状が生後半年未満で現れる場合には、治療が行われない限り一年未満で命を落としてしまう可能性が高いといわれています。

動脈菅開存症の診断
上記の症状が認められた場合や、健康診断の際の心臓の聴診で本疾患が疑われます。心臓の超音波検査(エコー検査)にて確定診断が行われます。

エコー検査の実際
下図の左側は、肺に行く血管(肺動脈)を中心に抽出している画像です。この部位では、正常であれば青く染まる血流だけ存在します。本疾患では、正常な青い血流の他に、モザイク状の血流が混在しているのが確認されます。また下図の右側では、そのモザイク状の血流の性質を調べています。聴診の所見に加えて、これらの所見がそろうと、本疾患が診断されます。
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動脈菅開存症の治療
開存している動脈菅に対して、カテーテル塞栓術または外科的結紮術による動脈菅の閉鎖処置が適応となります。また進行してしまっている場合には、閉鎖処置が禁忌となるため、決定的に有効な治療方法がないものの内科療法が選択されます。

二次診療施設のご紹介
当院においては、循環器の外科手術を実施していないため、本疾患の外科治療は北海道大学獣医学部をご紹介させていただいています。

子犬なのになんとなく活力がない、他の子犬と比較してなんとなく呼吸回数が多い、ちょっとしか運動をしていないのにすぐに疲れてしまう、などの症状が気になった場合には、まずは聴診器で心臓の音をしっかりと聞いてみてもらうといいと思います。

トイプードルの前足の骨折

トイプードルに代表されるトイ種の前足の骨折は、通常の生活を送る中でも遭遇してしまう比較的多い骨折の1つです。ちょっと高いところから飛び降りてしまっただけで、または、子供と遊んでいて軽く踏まれてしまっただけなのに、ギャンと鳴いて片足をつけなくなってしまった場合には、骨折を疑う必要があります。とくに、痛がっている肢が、あきらかに通常では曲がらない位置で曲がっている場合は、極力患部を動かさないようにして、すぐに動物病院を受診しましょう。

動物の手首から肘までの部分を前腕部とよび、橈骨と尺骨という2本の骨で構成されています。トイ種の場合、この部位の骨がもともと非常に細かったり、嬉しくてジャンプなどを繰り返すことで骨の硬化現象がおこり、骨折が生じやすくなるという考え方などがあります。折れてしまう場合、2本同時に、骨の中央部から末端部にかけて骨折する事が多くみられます。

骨折の治療方法
一般的に、骨折の治療方法の選択枝には、外固定と内固定またはその両方の組み合わせがあります。
外固定:ギブス固定、トーマススプリント固定 など
内固定:プレート固定、髄内ピン など

これらの治療方法の選択は、骨折した動物の体格や年齢、骨折部位や骨折タイプによって、術前までに決定されます。とくに、トイ種の場合、骨折した骨が癒合しづらいという特徴を持っていることから、より積極的な治療方法の選択が望ましいとされています。しかしながら、動物の場合、術後の完全な安静が難しい場合が多く、骨折部位の癒合不全や術後の再骨折、内固定のズレなどに対する課題がまだまだあり、より良い治療方法への改良が、日々、獣医療界全体でも行われています。

手術の実際
プレート固定を用いた橈尺骨骨折の一例です。ベットから飛び降りた際にギャンと鳴いて前足をつけなくなってしまったトイプードルのコのレントゲン写真です。
前腕部の2本の骨(橈骨と尺骨)がそれぞれ折れてしまっています。
DSCF2198 op
上記の骨折タイプの場合、プレート固定による内固定が有効となります。術後の癒合不全や再骨折の確率を最小限に収めるためには、骨折した骨の形状にあったプレート(下の写真の黄矢印)とボルトの選択や、プレートを入れるのに最小限の切開に留めるということが、需要なポイントの1つといえます。
プレゼンテーション1プレート

トイ種の場合、二本ある骨の一本(尺骨)は非常に細く、プレートや髄内ピンの装着ができません。しかしながら、橈骨(太い方の骨)の手術をすることで、橈骨自体が副木の代わりとなり、尺骨は自然治癒できます。下の写真の黄矢印は、尺骨の骨折部位を示します。橈骨の手術が正確に行われれば、尺骨は、骨折部位を元の位置に戻してあげるだけで治癒します。
スライド1

6週間目のレントゲン写真です。まだ、あまり大きな変化は認められません。
DSCF1960 6週目

10週間目です。尺骨の折れた部分が盛り上がり(仮骨の形成)、骨折が治癒するための重要な現象が生じてます。
DSCF2090 10週目

12週間目です。仮骨の形成によって骨折の治癒が進んでいます。骨折が治癒すると仮骨はやがて縮小し、骨が元の形状に戻っていきます。プレートを装着した橈骨の骨折部位も殆どわからなくなっています。ここまできたら、あとはプレートを抜去する計画を立てていきます。
DSCF2195 3ヶ月目

トイ種の術後ケアでとても大切なこと
トイ種の骨折治療において、常に大きな課題として挙げられるのが骨折部の癒合不全です。癒合不全とは、手術した肢の荷重が開始されることによって、骨折部とプレート間で発生する、持続的で微細な力によって起こる現象で、骨の治癒が進まないだけに留まらず、骨の吸収や病的骨折にも発展してしまいます。癒合不全は、初期にレントゲン検査で発見することができれば安静の徹底や、再固定処置によって改善させることが可能なため、術後は頻回のレントゲン検査を受けることがとても重要となります。

また、特にトイプードルの場合、ジャンプする習慣を持つコが多く、普段から繰り返すジャンプの負荷が骨に蓄積することによって、骨折が生じやすくなるという考え方があることからも、ジャンプをしてしまう習慣を変えていくことも大切な事の一つと考えられます。

 

獣医療の専門化が進むに従い、専門とする分野内の疾患を一病院で網羅的に対応するために必要な機材が増えるなどの事情により、2023年現在、獣医療費の高騰が続いています。当院では、骨折治療をトイ種に限定することで、ご負担の軽減を目指しています。