こんにちは。看護師の坂本です。
今回は整形外科を学んでまいりました。
整形外科Ⅰでは概論で少し触れた、骨格、筋肉などの基本知識と痛みによる歩行状態の変化についてです。
骨格の基本を今回学び、次回整形外科Ⅱでは疾患や検査について学びます。
ほとんどの哺乳類は骨格構造がほぼ同じといわれています。
人の骨と似ているところもあるので、何となくわかっている方も多いとは思いますが基本知識をまとめております。
以下内容
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整形外科Ⅰ
筋骨格系の構造、機能
骨、筋肉、関節、腱、靭帯などを合わせて筋骨格系と呼び、動物が正常に適切な運動が出来、健全な日常生活を送ることが出来るためにはこの筋骨格系の役割が重要。過度な運動や体重、加齢により、筋骨格系に不全をおこすと、移動や起立困難など生活や生命の維持に障害をもたらすことになる。無計画な繁殖などで筋骨格系に遺伝性疾患を持つ動物が作られてしまう事もある。近年では、QOLの向上のためにリハビリテーションや積極的な整形外科手術が行われることも多くなった。
骨格
複数の骨が組み合わさって出来る骨格は、骨組みとして体を維持するだけではなく、内臓などの柔らかく、重要な組織を守る役割も担っている。そのほかにも、体内の約99%のカルシウムを貯蔵したり、骨髄で血液を作るなどの働きをしている。 歯のエナメル質の次に硬い物質で、カルシウム、コラーゲン、コンドロイチンで構成されることで固さの中に多少のしなりを持つ。
骨の構造
海綿骨
スポンジのように柔らかく細かな網目状の構造。その隙間が骨髄で満たされている。骨の一番内側の層。骨折修復時、ピンを入れる場所。
緻密(皮質)骨
骨表面の硬く密度のある部分。血管、リンパ管、神経などが通っている。縦法方向に伸びる管をハバース管と呼び、横方向に(骨髄へ)伸びる管をフォルクマン管と呼ぶ。骨細胞があり、他の骨細胞と連絡して栄養の移動や、老廃物の排除なども行う。
骨膜
繊維組織で出来た骨表面を覆う膜。骨の直径を太くし、骨折時の治癒にも働く。骨膜には神経が多いので、痛みが強い。
骨髄
造血組織を含み多くの血管が分岐する赤色骨髄と、すでに造血機能が失われ脂肪がおもな成分となる黄色骨髄がある。
骨端軟骨
長骨の端にあり、成長する際に起点として骨が伸びる(成長線)。動物の成長が止まると骨化し伸びなくなる。この部分の骨端線のレントゲンである程度の年齢がわかる。ここの成長線が骨折してしまうこともあり、その場合骨の成長が止まってしまう事がある。
脊椎の解剖
第1頸椎を環椎、第2頸椎を軸椎と呼ぶ。頭蓋骨から環軸椎までは椎間板と呼ばれる衝撃吸収や骨の動きをスムーズにする仕組みがなく、第三頸椎から尾椎までの椎骨間には椎間板がある。肋骨は同じ番号の胸椎の横突起と肋軟骨で繋がるが、第13肋骨は胸骨に繋がっていないので筋肉内で終わっており浮遊肋骨と呼ばれる。
骨盤の解剖
骨盤は寛骨と呼ばれ、腸骨、恥骨、座骨の3つの骨が繋がって出来る。生まれてすぐの幼少期時代にはレントゲンで繋がっている場所の線が見えるが次第に見えなくなり、一つの骨に見えるようになる。
頭蓋骨の解剖
犬の頭蓋骨は大きさや形など犬種によって形が異なるが、猫は大体同じ形をしている。
関節
骨同士を繋ぎ、動きを滑らかにする構造。骨端同士の間を関節腔といい、関節包に包まれている。骨端の関節面は関節軟骨でおおわれ、関節包の内壁には滑膜がある。滑膜内で滑液を分泌し動きを滑らかにしている。関節炎の際には関節包内に滲出液がたまり、関節が腫れる事がある。関節包の特定部位には靭帯があり、関節運動の方向や範囲を決めている。この靭帯が過進展すると損傷し、捻挫と言う状態となる。関節はそれぞれ場所により形が異なる。
筋肉
骨格を動かす骨格筋と心臓壁をつくる心筋は横紋筋で、内臓や血管の壁をつくるのは平滑筋。この内、意志によって収縮伸展が出来る骨格筋は随意筋であり、平滑筋と心筋は不随意筋である。 骨格筋は関節をはさんだ骨と骨の間を繋いでいる。筋の両端は、腱がひもになって骨膜に付着し骨と強固に接続している。筋肉の性状により名称が異なり、頭筋、腹筋、鋸筋などがある。それぞれ場所により頭に数字がつく。筋肉が収縮した時に動く部分を終始部、動かない部分を起始部といい、同じ方向に働くものを協力筋、反対方向に作用するものを拮抗筋という。筋肉は層になって身体を守っている。
整形外科疾患のポイント
整形外科疾患の多くは痛みを伴うが、動物は痛みを限界まで隠す傾向がある。姿勢や歩行、生活態度の変化で痛みを察知してあげる事が必要になる。 また動物病院内ではより痛みを隠すことが多い、飼い主さんからの的確な主訴、問診での聴取から痛みによる変化なのかを察知する事になる。正常を理解し、何がおかしいかを分かってあげる。また運動器のみではなく、食欲不振や、性格の変化なども痛みの訴え方としてあることを理解しておく。
起立姿勢、歩行の異常
痛みのある肢に体重をのせようとせずに、反対側に身体を傾ける。微妙にしか傾かない場合もあるさらに痛みが酷い時には患肢を挙上する。この場合、熱感や腫れがないか確認する。期間が長い場合、四肢の使い方に差が出るため筋肉の付き方にも変化が現れる。使用回数の少ない肢の筋肉は細くなり、足の太さに差が出る。 また普段と様子が異なり、立ち尽くしていたりする場合もある。 歩行様式を診るためには出来るだけゆっくり歩かせる方が良い。これは痛い肢で支える時間を出来るだけ短くしようとする歩行をよく観察するためである。歩行リズムが乱れていたり、頭を上下に揺らしながら歩いている場合は痛みがある場合がある。神経系にも障害がある場合、甲部と肢端を引きずるように歩行し、爪の甲部がすり減っているなどの状態がみられる事がある。
これらを動物病院内で観察する場合、動物が滑らない、落ちない状態で行う事。どんなに自分ひとりで動けない状態であっても目を離さないようにする。 また触診時も最初から強く触りすぎないよう注意する。急に触れ傷めるとそれで悪化してしまう事もある。まずは健常な場所から触診をはじめること。保定もどこがどのような状態か判明していない間は全てに細心の注意を払う。レントゲン撮影時も余計な力がかかってしまわないように注意する。
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いかがでしたでしょうか。
骨や筋肉それぞれにも名称がありますが今回はそれらは知っているという前提でのもっと内部の基本知識でした。
次回の整形外科Ⅱではより具体的な疾患や検査について学んでまいります。
わんちゃん猫ちゃんの高齢化がすすみ始めている今、筋骨格疾患は皆様も気になる疾患の一つになっていると思います。しっかりと学び皆様の、わんちゃん猫ちゃんの役に立てるようになってまいります。
看護師 坂本恵