看護師通信

猫ちゃん用ちゅーる

こんにちは!看護師の阿部です。
札幌もとうとう根雪になってしまい、猫もこたつで丸くなる季節になってしまいましたね。
2017年も残すところ数週間!1年があっという間に感じます。
今回は病気のお話しではなく、猫ちゃん用の栄養剤のお話しです!
きっと猫ちゃんを飼っている方なら知っている方が多いかと思いますが、最近コマーシャルなどでも話題の「ちゃおちゅーる」のいなばペットフードから、動物病院専用の「エネルギーちゅーる」が発売されました!
●エネルギーちゅーるの特徴
・高栄養
・高カロリー(市販のちゅーるの約2倍)
・猫ちゃんにとって欠かせない必須アミノ酸、タウリン配合
・抗疲労成分「イミダゾールペプチド」強化
まぐろ/とりささみ味 1本 75円(税込)

食欲が落ちてしまった猫ちゃんや、術後の回復期はもちろん、ペースト状になっていますので高齢の猫ちゃんにとっては食べやすく、投薬が必要な際にもお使いいただけます。
猫ちゃんはお薬を苦手とする子が多く、飼い主様からも投薬に苦戦しているお話を伺います。幸い我が家の猫たちは食いしん坊がゆえに、お薬を飲ませたいときはドライフードに混ぜるとペロリと食べてくれるのでとっても助かっていますが、やはり猫も人もお互いにストレスなく投薬でき、治療が上手くいくと良いですね。
お薬が苦手な猫ちゃんでもこのエネルギーちゅーるにそのまま混ぜていただくと、喜んで食べてくれる猫ちゃんも多いそうです。

クリスマスに猫ちゃんにちょっとしたプレゼントとして、投薬用として、なかなかごはんを食べてくれない猫ちゃんに…いかがでしょうか?

受付にご用意しておりますので気になる方はぜひスタッフまで♪

看護師セミナー6 口腔学Ⅱ

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は口腔学Ⅱです。
前回のⅠから少し空いてしまいましたが、今回は前回の続きとして具体的な疾患の病態や、歯磨きの慣らし方を簡単にまとめました。
前回の専門的な用語説明よりは少しわかりやすいかなと思います。

 

以下内容
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口腔学Ⅱ

口腔疾患診察時に必要な観察ポイント
口腔内の疾患は発症した初期には気付かれずに進行してから症状を表わし気付かれる事が多い。口腔内を見たくても、顔周りを触られる事を嫌がる子が非常に多く、病院で身体検査時にはじめて気付かれる事もある。
口腔内疾患が悪化すると、顔が左右不対称に腫れたり、口唇や眼下、頬部が腫れ自壊したり、顔を触るのを今まで以上に嫌がったり、触ると痛そうに鳴く、片側性の鼻出血、下顎のリンパ等が腫れる、口臭の悪化(全身性疾患,消化器疾患や腎臓などが原因の場合もあるので注意)、顔の周りの毛や前肢の脱毛(顔を気にしているが舐めれないので舐めやすい前肢を脱毛させてしまう)などの症状がみられる。これらは一つだけの場合もあれば複数の症状の場合もある。
口腔内の疾患はわかりやすい症状のものから、本当に口腔内だけが原因なのか判りづらい症状もあるので、診察時には注意が必要である。

歯周病とは
歯周病とは歯の表面で細菌が毒素を産生し、歯肉や骨に炎症を起こした状態の事を言い、気付かれていないだけで、3歳以上の犬の約80%に見られている疾患と言われる。歯周病のはじまりは、菌膜と呼ばれる歯垢のもとで、菌膜が付着して24時間経つと歯垢になり、その歯垢が2~3日経つと歯石に変化する。この菌膜、歯垢は歯磨きなど人の手、日常管理で崩し歯石になる事を予防する事が出来るが、歯石は歯磨きなどでは取る事ができない。この歯石があることで炎症が更にすすみ、歯肉炎、歯周炎が合わさって、歯周病となっていく。

歯石は放置すると更に細菌を表面に集め大きくなっていき、歯周ポケットから体内へ細菌の侵入を許してしまう。腎臓に細菌が入ってしまい尿毒症を引き起こしたり、心臓の弁に細菌が付着し循環器疾患を引き起こしたりする可能性があると言われている。歯垢、歯石は大型犬より、小型犬の方が付きやすい。

歯周ポケットの拡大、歯の動揺などの原因となり歯が脱落してしまう。通常歯が脱落すると歯周炎は消退するが、それまでの間に上記のような様々な症状を起こす。重度の炎症の進行により、上顎骨が破壊され口腔と鼻道にトンネルが出来て繋がってしまう口鼻ろう管と言う状態になってしまったり、下顎骨骨折する事もある。

他の代表的な口腔疾患
乳歯遺残
永久歯が生えてきても乳歯が残ってしまっている状態の事。不正咬合の原因となったり、重なり合った箇所に歯垢がたまりやすく歯周炎の原因になりやすい。
欠歯
あるべきはずの場所に歯が欠如している事。埋没している事もある。
不正咬合
上下のかみ合わせが異常な状態。正常な状態の子より歯垢や歯石が溜まりやすく歯周炎をおこしやすい。
歯の損傷
 折れて神経が出てしまっている場合には感染を防ぐため抜歯が必要な場合もある。
猫の歯肉口内炎
猫に見られる歯肉および口腔粘膜の慢性炎症疾患。ウイルス感染との関連もあるが、これとは関係なく発症する場合もある。
う蝕
虫歯のこと。犬猫は虫歯がないと言われ続けていたが、虫歯をおこす菌が、人との過剰な触れ合いや、人の食べ物、炭水化物,甘いものなどを食べることにより虫歯になる子が増えてきていると言われている。

全身麻酔下での歯石除去処置
①  視診
口腔内をしっかりと視診した上ではじめる。口腔内処置を行う際はどのような処置においても消毒,洗浄を行うべき

②  スケーリング
超音波スケーラーで歯の表面、裏面、歯間を丁寧に磨く軽く羽を撫でるようにスケーラーを動かし歯石を除去していく。強く当ててしまうと超音波の振動が止まってしまうのできちんと歯石が取れなく時間がかかってしまう。

③  抜歯

④  ルートプレイニング、ポリッシング
歯根部,歯の表面を滑らかに研磨し歯垢を沈着しにくくする。これで菌膜も除去できるので歯石の土台を完全に排除出来る。研磨の際は2種類の粒子を使用し、より滑らかになるように丁寧に研磨する。

⑤  洗浄
口腔内には多くの雑菌が常在しているので、麻酔下の動物の眼に眼軟膏を事前に入れるなどの対策をし、処置する人も自らの顔面などに水がかからないように注意する。動物の顔周りが濡れてしまうため、蒸しタオルなどで綺麗に拭き取り乾燥させてあげる。目には見えない無数の雑菌が飛び散っている事を念頭に入れ手術室の清掃、消毒をする。
覚醒後は抜歯の縫合部を気にして前肢や床で擦ったりしないように、エリザベスカラーの装着をお勧めする。(気にしない子もいるので飼い主さんと相談する。)抜歯して縫合した場合、完全に癒合するまでの2週間は硬いフードや硬いおもちゃを避けてもらうように指示する。また縫合周囲は2週間は歯磨きを避ける。しかし、ホームケアを怠るとまた歯垢歯石が付着してしまうので、他の歯だけにするか、または液体タイプやデンタルジェルでの管理を行うかの相談をする。歯の破損があった場合は、同じおもちゃなどを与えないようにしてもらう。抜歯縫合部位が多い場合は、抗生物質の処方、場合によっては鎮痛消炎剤の処方も検討する。器具の片づけ方法としては、水のみで洗浄するもの、洗剤を使用出来るもの、アルコールの消毒でおこなうものなど様々な方法があり、機械機材によってわけなければいけないものがあるので注意する。

歯磨きの指導方法
仔犬、仔猫(1歳くらいまで)のうちに出来ていて継続できると一番良いが少しずつ慣らせば成犬、成猫でも出来るようになる子はいる。始めは一瞬、短い時間からはじめていき徐々に時間を伸ばしていく。しっかり出来るようになるまでは長期戦を覚悟しておく事を伝える。はじめ方、終わり方を決めておいてあげる(掛け声やご飯の後すぐなど)と犬猫達には馴染みやすく習慣化しやすいと言われている。
①口周りを触られる事に慣らす
頭を撫でている時に一瞬口周りを触るからはじめ、口周り単独で触れるように、指先→手の甲→手のひらで撫でると少しずつ触る範囲を広げていく。この時、触れたら褒めるまたは触れたらおやつをあげるなど口周りを触られると良い事があると関連付ける。もし出来るなら、仰向けの体勢で行えると歯磨きする際にやりやすくより良い。

②口の中を触られる事に慣らす
唇をめくる→歯や歯肉を一瞬触る→指を奥の方に入れる→歯の裏側に触れるとこれもすこしずつすすめていく。歯磨き剤や肉汁を指につけて触ってみる事ができるとより良い。上記と同じように、慣れるまでや先にすすめたら褒めたりしてあげる

③ガーゼや軍手などに慣れる
いままで指や手のみで触っていたが、口の中に物が入る事に慣れてもらう。最初は物を持った手で口周りに触れるなど、物があっても怖くない事を学んでもらう。触られる事に慣れ、ガーゼなどにも不信感がなくなったら、指に巻きつけ犬歯など磨きやすいところから磨く。これも少しずつ時間を伸ばしていき最終的に全部を磨けるようになる

④歯ブラシで磨く
磨く前に③と同じように歯ブラシ自体を慣らしていく。歯ブラシそのものに慣れたら歯ブラシを濡らし、少しずつ歯ブラシを行う。歯ブラシは、口腔内を傷つけてしまわないよう先が小さく毛が軟らかいタイプを選ぶ(人の幼児用で可)歯ブラシの角度は歯に対して45度で当てるのが一番良い。

犬猫の歯は、前記のように3日で歯石に変わってしまうので、毎日歯磨きが出来るのが望ましいが、最低でも3日に1回の歯磨きを行うと良い。どうしても歯磨きが難しい子もいるので、その場合は双方の信頼関係のためにも、歯磨き以外のデンタルグッズで何とか管理できないのか、それぞれのグッズ、おやつの特性を理解し説明し一緒に口腔内ケアを考えてあげる事も大切である。

 

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いかがでしたでしょうか。
お口周りを触るのを嫌がる子が多かったり、触れていても奥のほうまで見ることが難しかったりして、気付いた時には抜歯が必要になってしまっていた…ということが多い口腔内疾患ですが、少しずつ慣らしておければ最期の時まで歯を守ってあげる事ができるかもしれません。

歯磨きだけではなく、おやつや様々なグッズで口腔内管理を補助する事も出来ます。
病院にもさまざまなグッズがありますのでご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

看護師 坂本恵

猫ちゃんの乳腺腫瘍

こんにちは!看護師の阿部です。
11月に入りますます寒くなり、朝はお布団から出たくなくなるような日が続いてきましたね!
我が家の猫たちも最近では暖房の前から離れず丸くなって寝ていることが多いです。あったかいところから離れたくないのは人も猫も同じですね。
私自身、猫が大好きなので猫ちゃんの飼い主様とお話しする機会が多いのですが、私の家でも4匹の猫を飼っています。
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4匹ともみんな雑種で、拾ったりもらったりと縁あって我が家にやってきた子たちです。
その中の1匹、長毛猫のまりもに今年乳腺腫瘍が見つかりました。今回はその乳腺腫瘍についてお話しします。
●乳腺腫瘍ってなに?
乳腺にできる腫瘤のことで、良性のものと悪性のもの(乳腺ガン)があります。
わんちゃんの場合、乳腺腫瘍の良性と悪性の確立は五分五分と言われていますが、残念なことに猫ちゃんでは80~90%が悪性腫瘍であると言われています。
●症状
猫ちゃんの乳腺は通常、前足から後ろ足の付け根にかけて左右4対(計8個)あり、特に乳腺腫瘍は腹部の乳腺にできやすい傾向にあります。
猫ちゃんの乳腺全体を触り、硬いしこりのようなものを見つけたら要注意!です。
腫瘍の大きさはさまざまですが、徐々に進行するにつれて大きくなります。腫瘍がある部分の乳頭が赤く腫れたり、液体がにじみ出てきたり、腫瘍の表面から出血がみられることもあります。
また、乳腺腫瘍は肺や胸への腫瘍転移が早く、転移してしまうと胸水がたまったり、胸膜炎によって呼吸が苦しくなってしまうことがあります。
●原因
乳腺腫瘍の原因ははっきりとはわかっていません。
しかし、10歳前後の猫ちゃんに発症が多いことから、老化との関係や、避妊手術をしていない猫ちゃんの発症率が、避妊済みの猫ちゃんに比べて7倍高いと言われていることから女性ホルモンの影響もあると考えられています。

●治療
治療方法は、外科的に腫瘍ができた乳腺の摘出を行います。
その腫瘍が良性か悪性なのかは、病理検査といって、当院ではなく外部の検査センターに提出して診断してもらう必要があります。
乳腺を摘出するには、全身麻酔をかけての処置になるので麻酔のリスクはどうしても避けられません。
先ほどもお話ししたように、乳腺腫瘍は肺や胸に転移することが多いので、手術を行う場合は事前にレントゲン検査などで転移がないかしっかり検査をして手術に挑みます。
症状や転移の状況によっては、放射線治療や抗がん剤を使った化学療法を行う場合もあります。
肺や胸に転移している場合、予後はあまり長くありません。早期発見、早期治療がとても大事です。

●予防するには…
乳腺腫瘍は、1歳未満で避妊手術を受けることで、発症率をぐっと下げることができます。
しかし避妊手術をしたからといって、100%予防できるわけではありませんし、避妊手術をする際にもどうしても全身麻酔をかけなければいけません。
女の子の猫ちゃんの場合、避妊手術をすると太りやすくなることもあります。どちらにしてもメリット、デメリットがありますので、獣医師とよく相談した上で猫ちゃんのためにどうしたら良いのか決めていきましょう。

我が家のまりもは、悩みに悩んだ結果、2回に分けて左右両方の乳腺を摘出しました。
麻酔をかけるのも怖いけど、転移したらもっとかわいそう…と思い、家族でたくさん相談して決めました。摘出した腫瘍は病理検査の結果、やはり悪性という結果でしたが今のところ転移もなく元気でいてくれています!
いつか転移してしまう可能性もありますが、元気で過ごせている時間を大切に、少しでも長く一緒にいれたらいいなと思います。

お腹を触られることを嫌がる猫ちゃんもいると思いますが、日ごろからスキンシップの一環として体を触ってお腹にしこりがないかチェックしたり、早期発見につなげられるといいですね。

看護師セミナー5 概論③

こんにちは。看護師の坂本です。
長くなっておりますが、今回で概論の最終です。
今回は高齢犬の事について、なりやすい疾患や注意点、介護についてや終末期といわれる最期のかかわり方についてです。動物たちとの最期は何年経っても全く慣れないもので、いつも何ができるだろう、何ができただろうと思ってしまいます。
お家での関わり方、看護師としての関わり方を学びまとめましたので
今健康な子たちも、これから新しくむかえる方も長文で読み辛いとは思いますが何となくでも心に入れておいていただければなと思います。

 

以下内容
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動物の高齢化
近年犬猫の飼育頭数に対して、老齢動物の割合が高くなっている。少し前の資料だが、犬の約40%、猫の約32%が7歳以上で高齢犬と言われる年齢である。
動物医療や予防技術の発展、薬剤の開発などの多くの条件により平均寿命が延びたり、病気の管理が出来るようになり高齢の動物が多くなっており、動物の高齢化が進むと共に、高齢動物の介護や病気治療などの家族の悩みも増えている。高齢になるにつれ看護や介護の必要性が増えてくるので必要知識も増える。今回は褥瘡管理や必ず対面する死との向き合い方、看護を学ぶ。

褥瘡の発生原因・防止策
褥瘡は組織に物理的な負荷が持続してかかり続け組織の血行が阻害されるとなり、その負荷の大きさと持続する時間によって発生するか否かが決まる。よって大きな負荷がかかっていても、時間が短かければ褥瘡になる事は少なく、小さな負荷でも長時間かかり続けた場合は褥瘡になる事がある。褥瘡が出来やすい場所は、腸骨,肩甲骨, 肘,膝,頭蓋骨眼瞼上など外から触って骨が出っ張って触れる所である。骨により内側から皮膚が押され、床と骨で皮膚の血行が悪くなりおこりやすい。寝返りを打てない子が、長時間同じ体勢で寝ている状況で同じ所に負荷がかかり続けると起こるので、体勢を変えてあげたり、クッションなどで負荷のかかる場所を変え続けたり、ウォーターベットや褥瘡防止用のマットに寝かせることで防ぐ事が出来るものもある。

 褥瘡管理の基礎管理知識
・消毒剤による組織障害を防ぐため、傷は消毒液で消毒してはいけない。感染が起こりうる状況の場合は生理食塩水で洗浄消毒を行う。生食がない場合は水道水で可。

・傷口を乾かさない。傷に乾いたガーゼなどをあてることで乾燥してしまい、壊死組織が生じる。ドレッシング材で保護しでてくる液体を受け止めながら治す。家で管理をする場合は、薬局などで売っている人用のドレッシング材を使用するか、 台所で使用する穴あきのビニールにペットシーツや軟らかい布,ガーゼなど吸水性のある物を入れ傷の上にのせ固定する。本来は病院のドレッシング材のように滲出液も利用し治していくことが好ましいが、家で管理する場合には感染のリスクも高くなるのである程度吸水も必要になる。ガーゼ自体を傷口に固着してしまうと、ガーゼ交換時に壊死組織だけではなく、治そうとしていた肉芽組織や細胞も一緒にはがしてしまう事になるので注意。
疼痛
高齢になると関節痛等の疼痛を訴える事も増えてくる。だが、動物は疼痛をそのまま素直に訴えてくることは少なく、私たちが組んであげる必要がある。 たとえば、老齢期になり痴呆と呼ばれる様々な症状が出てくる中の代表的なものとして夜鳴きがあるが、本当に痴呆で夜鳴きをしている場合と夜になると関節が痛んだり、同じ体勢でいる事により痛んだりしている場合がある。この疼痛による夜鳴きは疼痛管理でおさめてあげる事が出来る。このように高齢になると病気か加齢による変化か判別が難しい事がある。動物看護師はこの様々な変化を見逃すことなく、上手に表現出来ない動物の痛みなど他疾患を読み取ってあげられるようになるべきである。
疼痛の管理方法としては、消炎鎮痛剤などの投薬による疼痛管理とマッサージや冷却または温熱療法のように原因の根本解決にはならないが緩和することが出来る方法がある。疾患の内容により異なるが一般的には、急性の傷(断脚後3日間など)に対しては冷却しなるべく炎症の進み方を緩慢にする、慢性の傷に対しては温熱で緩和するといわれている。

浮腫
ずっと同じ体勢でいたり、疾患により血流が滞ると浮腫と呼ばれる主に末端部のむくみが出ることがある。動物が浮腫自体について訴えてくることは少ないが、違和感がある事で表情や態度、鳴き声がかわる事がある。浮腫に対しては疾患の縮小などのために投薬を行うか、原因の排除ではなく浮腫を緩和するためにマッサージを行う。
この浮腫緩和のマッサージには特別な方法や力は必要なく、四肢の指先、末端部から上へ向かうように触ったり握ってあげたりするだけでも効果的。
疾患
高齢犬で一般的に起こりやすい疾患は、心血管疾患、歯科関連疾患、貧血、肝臓疾患、 関節炎、腫瘍疾患、甲状腺や副腎のホルモン疾患、泌尿器疾患など様々なものがある。
これらのいずれかが起こる場合もあれば、ほぼ全てを網羅するように次々起こりうる場合もある。また若い時には疑う必要がなかった疾患を考えなければいけないので、診断には注意が必要である。またその看護をするにあたり必要知識を学んでおくべき。

歩き続けてもらうために
高齢になった動物が必ず歩けなく寝たきりの介護が必要になるわけではない。そのためには高齢になってからどのくらい歩かせてあげられるかが重要になってくる。高齢になるにつれ、代謝量が落ち脂肪量の増加から体重過多の子が増えていく。体重過多により肥満と呼ばれる状態になると、関節にかかる負荷が増え関節炎を起こし疼痛により、運動量の低下や炎症を抑えるために運動制限が必要になりさらに筋力を低下させてしまう。これが寝たきり状態で歩けなくなっていく一つの原因である。
ただ、ダイエットのためいきなり過剰な運動を始めると関節の負荷が強くなるのでその動物に合わせ、ほどほどからゆっくりはじめていくことがポイントとなる。
また、加齢につれて若い時と全く同じ行動を行う事は困難になってくる。段差が苦手になる場合にはスロープを用意してあげたり、床にお皿を置いて食事をしている場合、小さなテーブルに置くなど少し高くしてあげると首の関節にかかる負荷が減るなど小さなサポートが必要になる。

最期の関わり
亡くなる瞬間はその子によって様々で、飼い主さんの考え方にもよるので必ずしなければいけない事はない。辛い状況でも最期まで自分の力でお家でと言う方や、辛い状態を診ているのが苦しいから最期の時は病院などでみていない時に、誰かと一緒の状況で、苦しませたくないので安楽死で、など様々な考え方がある。最期の時をどのように過ごしどのように迎えるのか、きちんと話を聴き望む形をかなえてあげる事が動物看護師のできる事である。また飼い主が最期の時の迎え方を考えるように、動物自身も最期の瞬間を自分で考える事もある。大好きな人たちに見守られ、出来るだけ多くの人がいる状況で沢山名前を呼んでもらい、ありがとうの声に包まれながら逝く場合。大好きな人たちを悲しませないために、みんなが寝ていたり、留守にしている時離れた環境に居る時に逝く場合など。飼い主さんが望まない形でのお別れが来る事になっても、その子の意志として理解している動物看護師がその時の状況、考えうる可能性を飼い主さんに伝えてあげる事も重要な役割である。

安楽死も最期の選択肢として望まれる事がある。安楽死は獣医師や動物看護師が独断では決断出来ないし無理にすすめる事も絶対にしてはいけない。あくまで選択肢であり、最終決定権は飼い主さんにある。飼い主さんとその子のQOL両方を考え、今後の疾患の展望、予想を具体的に提示したうえでしっかり考えてから決断してもらう。
介護は飼い主さんに肉体的にも、精神的にも負担を強いる。その上、介護動物が反発するとさらに強いストレスがかかる、その状態では正常な判断が出来ずに、安楽死後後悔と安堵の両方が押し寄せる事があることも忘れてはならない。
安楽死を選択され実行する際には、細心の注意を払わなければいけない。立会いを希望されるのか、立ち合わないのかを話し合い、同意のもと行う。安楽死は苦しまずに逝かせてあげる人が出来る唯一の方法である。静脈確保をしっかり行い、薬液の漏れがない事を確認してから、使用薬剤をゆっくり注射していく。眠っているように安らかに逝くので、聴診などをしっかり行い最終判断を怠らないようにする。

動物との別れ,最期
死は誰にでも、どんな動物にも必ず訪れる事。細胞は生まれた時から、死を迎える時が決められている。今の楽しい穏やかな時は永遠ではありません。この限られた時間をいかにより良く過ごすかを考えて一緒に生きてあげる事が動物達の幸せに繋がる。 愛するものを失うと言う事は、傷が深く心をえぐり、痛手となってながく残る。苦痛や怒り、悲しみ、罪悪感が人の心を襲っている事が多い。
動物を亡くした悲しみを、誰も理解してくれないという思いや、過小評価されるのではないかと思い、語るのを恥じたり恐れたりして誰にも言えない苦痛。死によって引き起こされた自分の悲しみを周りはもちろん、自分も受け入れる事が出来ず、それに対する具体的な解決方法が分からずそのまま過ごしていくと、自分や周りを責め続け、身体的な異常や苦悩を抱え、現実が認められなくなる。というペットロスの状態が数年にわたり続いてしまう事がある。生活を共に過ごしてきた愛する子の喪失は、飼い主の生活にぽっかりと穴があいた状態になる。そこに居ないという物理的な穴から,毎日のスケジュール,日頃の思考パターンの穴など色んな状況でその穴を感じる。代われるものがないのだから、穴を完全に埋める事は不可能なのに埋めなければならないという焦燥感にも襲われる。
この様々な感情をきちんと理解した動物看護師は悲しみから立ち直るサポートをする事が出来る。悲しみから立ち直る妙薬はなく、一生忘れる事は出来ない。穴は埋める事は出来ないが普通の感情の状態へ前進した時、その穴は楽しかった思い出に変わる事が出来る。そのためには、悲しい感情を恥ずかしいと思わず受け止め、沢山愛する子を想って泣いてあげる事が必要で重要。
動物看護師として出来る事は、多くはない。だが、その時に一緒にいる、いつもの場所にいる、心の支えになる事、動物が好きで、愛する子を亡くした悲しみで泣いたり辛い思いをしているという事を恥ずかしいと思わせない環境を作る事は出来る。反対に、絶対に口先だけで慰めたり、後から非難する事はしてはいけない。どのような行為も、強制すべきではないし、励まし続けるをあきらめてはいけない。悲しみから立ち直れない、日常に戻れないと思う悲しみは沼地のようで、地図のない砂漠のような状態でさまよっている飼い主さんを動物看護師が地図になり、簡単ではないので急がなくても良いが、日常に戻り生活している人々もいるという事をさし示してあげる。いつか戻れるので、急がず悲しんであげられる状態を自分で認めてあげるように伝えてあげる。辛い気持ちを理解してあげる。 辛い気持ちを一人で抱えている事が一番苦しい事なので、一人で抱えなくて良い、理解しようとしている人がいる事を伝えてあげる事も必要。

 

最期の電話、言葉
最期を家で看取った場合、または突然亡くした場合、飼い主さんから電話で病院にお知らせが届く事がある。飼い主さんは、愛する子が亡くなった事実をどう伝えるか、どのタイミングで伝えるのが一番良いのか、迷惑にならないのかなど、一番悲しい時期に沢山の事を考えてきてくれる。その想いがある事を理解した上で、電話対応や言葉を受け取るべきである。お返しでかける言葉は、その子の状況やその子への沢山の想いを考えると、一概には決められない。その子を想い、伝えたいと想う言葉をかけてあげる事が一番である。その中でも、病院ごとに必ずかけてあげたい言葉、伝えたいことがあると思う。全ての人がそれを理解しておくことが必要である。

 

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いかがでしたでしょうか。
長文で読み辛くなってしまってすみません。
介護をする、高齢になるということはすべての子ができることではありません。
辛いこともあると思いますが、介護をするところまで一緒にいてくれる子たちと毎日に感謝して無理せず付き合っていける方法を一緒に探していければと思います。

看護師 坂本恵

看護師セミナー4 概論②

こんにちは。坂本です。
今回は概論②は腫瘍についてです。
腫瘍といっても良性、悪性など様々なものがあります。その分類方法や、悪性腫瘍の看護、治療について
また動物看護師として注意するべき点などを学びまとめました。
具体的に病名があり、治療法を学ぶという講習ではありませんが腫瘍についての知識が少しでも伝わればと思います。

 

以下内容
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癌、腫瘍とは
細胞がルールに反して自己の暴走により過剰に増殖してできた塊の事を腫瘍という。腫瘍は悪性のものと良性のものに分けられる。癌という言葉は一般的に悪性腫瘍全般を示すものとして使用されている事が多い。癌に侵された細胞は炎症を起こしていると言える。炎症の特徴とは、腫れ、赤み、熱感、痛みのあるものでこれに機能不全が加わると炎症の5大徴候と呼ばれる。

腫瘍の分類
腫瘍が身体に与える影響の大きさにより、予後(将来的な状況や見通し)の悪い悪性腫瘍と予後の良い良性腫瘍に分けられる。さらにその腫瘍の発生した細胞が上皮細胞に由来するものを上皮性腫瘍(肺癌,乳癌,など)と分類し、上皮細胞以外に由来するものを非上皮性腫瘍(骨肉腫,血管肉腫など)に分類する。悪性で上皮性のものを癌腫、非上皮性のものを肉腫という。腫瘍細胞をを調べた時に、腫瘍になったもとの組織と似た特徴をもったものを分化型と呼び良性に分類されるが、特徴を失ったものは未分化型と呼び悪性に分類する。

悪性腫瘍の特徴
・勝手に増殖を続け止まらない、自律性増殖
・周囲にしみ出るように広がるとともに、あちこちに飛び火し転移する、湿潤と転移
・正常組織の栄養を癌組織が奪い身体が衰弱していく、悪液質 があり
良性腫瘍は自律性増殖はするが湿潤や転移、悪液質をおこすことはない。

診断をするためには
腫瘍を疑う時には各種検査が必要になる。全ての検査が必ず必要なわけではないが、身体検査,血液検査,画像診断(レントゲン,エコー,CT,MRIなど),尿検査,細胞診などを行い確定診断をしていく。細胞診での確定診断が比較的容易な肥満細胞腫は、針をさすことによって播種(まだ侵されていなかった周囲の細胞に癌細胞が種を撒いたように広がる事)が起こる可能性があるが、細胞診しないと診断が困難のため、手術時に広く摘出する必要がある。

腫瘍の治療
悪性腫瘍の治療には抗がん剤、外科摘出、内科治療、放射線治療などが代表的に上げられる。悪性腫瘍の疑いがある、または悪性腫瘍ですと診断をうけた飼い主さんはその言葉を聞いた瞬間から不安と恐怖を感じ、この言葉からネガティブな症状と予後を連想される。治らない病気に対して拭いきれない恐怖や悪印象を持たれている場合が多い。悪性腫瘍診断し、治療の相談、開始時には飼い主さんとしっかり話し合う事が重要であり治療を成功させ続けるためには絶対に必要な事である。これは獣医師に限った事ではなく、動物看護師も必要知識を持ち、予後や治療,その治療によって起こりうる副作用やその子に合った環境,条件なども一緒に考え相談出来る相手になるべきである。飼い主さんが常に治療に対する不安と恐怖をもっているという事をスタッフ全員が共通認識とし、治療を受けている子と同様に飼い主さん自身も苦痛を表わす子を見ている事の苦しみから解放されたい気持ちをもつ事もある。その結果、現在の、または今以上の治療を拒否したい気持ちを持っている事もあり得るのでしっかり相談し先に進むべきである。
治療を受ける子に対してQOLが改善するように、有効な治療を選択し実行出来るようにする。飼い主さんが望む事は代表的に、痛い辛い思いをさせたくない、嘔吐や下痢をさせたくない、飢えさせたくない ということであり、動物看護師はこれらを念頭において治療、看護を担当する。

治療の目標地点は人によって様々であり、完治を目指すのか、完治まではいかないが延命を目指すのか、寿命を達成させるために最善を尽くすのか、QOLを保つ事を最優先とするのか、QOLの向上を目指し対症療法をするのか、緩和的治療、ホスピスケア、安楽死など 望むことは様々なので合わせた治療が出来るように考える事が必要。

担がん動物の治療に対する動物看護師の役割
悪性腫瘍を持つ子の多くは癌性疼痛と呼ばれる強い痛みを訴える事があるので、しっかりとした鎮痛の治療が必要になる。疼痛を緩和することで、癌の根治に繋がらなくても調子がよくなったり、食欲が戻ったりし飼い主さんの心も治療に前向きになってくれる等、全てが良い方向に向かう事がある。鎮痛薬にも様々な種類があるため、獣医師に担がん動物の状況を詳しく伝え、積極的に鎮痛治療に望むべきである。
担がん動物(がんを患った動物)の目標に合った治療に最善を尽くすのはもちろんの 事、動物看護師は飼い主さんの精神的な関わりも含めて寛大な気持ちをもって接することが要求される。非常に辛く悲しい場面に出くわすことも少なくないが、担がん動物、飼い主さんと一緒に乗り越えていく覚悟と信頼関係を築く事も必要である。

悪液質、栄養療法
癌細胞と正常細胞が栄養分を取りあう事になるので、担がん動物には適切で良質な栄養を充分に与えることが重要になる。しかし、食欲の低下や機能障害により充分に食べられない事も多く、動物看護師は少しでも食べてもらえるように工夫する方法を知り実施できる、または飼い主さんに伝えてあげられるよう知識をつける事が必要である。好みの形状や温度、香りなどを探ってあげるのもひとつ。食が進まない場合には強制的な給餌も手ではあるが、この際には通常より一般状態が悪いので、誤燕や嘔吐を引き起こさないようなど細心の注意が必要となる。
より確実なカロリーの摂取方法として、経鼻食道チューブや胃ろうチューブなどもあるがこれは飼い主さんが望めばの処置になる。様々なリスクや、注意点があるので自宅で行う際の方法の指導もしっかりとした知識を持った動物看護師が行う。

免疫療法
リンパ球の中のT細胞の中のNK細胞が働き癌細胞から正常細胞を守る。このNK細胞を増やす療法のことを言う

外科摘出術
全身麻酔下の外科手術で腫瘍を摘出すること。良性腫瘍の場合、経過観察は必要だが再発しない限り症状が出る事がなくなる。摘出範囲として、良性腫瘍の場合本体から周囲,下方向にも1㎝幅以上での切除、悪性腫瘍の場合は3㎝以上と言われている。外科手術で体腔内の腫瘍を一部摘出し、病理検査に出す事もあるが悪性腫瘍だった場合は再手術になってしまうので、悪性腫瘍を疑う場合は全部を摘出して病理検査に出す方が多い。術後の入院管理などの際には病状を知っている必要があるため、疑われている腫瘍の種類などをしっかりしっておくべきである。

化学療法
血管内抗がん剤治療について
抗がん剤は、癌細胞にのみ作用するのではなく、正常細胞にも大きく影響を与える。
これが副作用とよばれるもので、代表的には骨髄抑制・消化器障害・脱毛がある。
抗がん剤は一般的に使用される薬剤とは異なり、使用方法、投薬量が細かく定められている物なので、間違える事は命にかかわるので絶対に許されない。
また抗がん剤は使用する動物にのみ影響を与えるのでなく、薬剤に触れることで人も健康を害する可能性があるため、取り扱いや保定中、排泄物の処理などに注意が必要である。抗がん剤の代謝時間は薬剤によって変わるので、排泄物の取り扱いはグローブをして行うのが望ましい。代謝に時間のかかる物は、家に帰ってからの取り扱いにも気をつけてもらうよう伝えていくべきである。そのためには薬剤による代謝時間を知っておく必要がある。
抗がん剤投与時、特に静脈内注射時には長時間の点滴が必要になる事が多く、留置針を設置する際に絶対に露液(もれてしまうこと)しないように注意する。もしも露液してしまった場合は、重度の皮膚壊死をおこしてしまうので露液を発見した段階で点滴,注射をやめてシリンジ等で留置針から少しでも体内の薬液を吸引し、無菌の生食で薬液を薄めるため洗浄する。この事から薬液が漏れてしまった場合、すぐに留置針をはずすのではなく、洗浄が終わるまでは留置したままにすべきである。
抗がん剤投与後には、少しの変化にも対応できるようにしっかりとした管理、観察が必要である。また予期していない副作用にも対応できるように注意する。

 

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いかがでしたでしょうか。
悪性腫瘍を患った子の飼い主様は毎日色々な想いを抱えていることと思います。
そこで私達動物看護師が少しでもその想いをくみ取って、一緒に歩んでいけるよう今回のような講習で沢山の知識をつけていかなければと思います。

次回の概論では高齢犬の実情、介護についてをまとめお伝えいたします。

看護師 坂本恵