看護師通信

猫セミナー

こんにちは。看護師の阿部です。
先日、札幌市教育文化会館で開かれました、市民公開講座に参加して参りました。
講座内容は「猫の常識・非常識‐気をつけたい猫の病気と症状‐」というもので、猫ちゃんに多い病気についての内容でした。
学んできたことを交えて、今回は猫ちゃんの泌尿器の病気についてお話します!
最近では猫ブームとテレビでも取り上げられることが増え、猫の雑貨や小物などお店でみかけることも多い気がします。猫好きとしてはとっても嬉しいことですね!
そんな猫ちゃんですが、実は来院理由としてもっとも多いと言われているのが、膀胱炎や尿石症など泌尿器のトラブルです。
泌尿器の病気は大きく分けると膀胱と腎臓の2つに分けられます。

~猫のトイレ事情~
●排泄を失敗したら…
・猫ちゃんはトイレでない場所でおしっこをして叱られても、「トイレではない場所での失敗」と「叱られたこと」を関連づけられません。
新しい絨毯やふかふかのお布団でおしっこをされてしまうと、ついつい「あ!こんなところでおしっこして!!」と、叱りたくなってしまいますよね。
でもそこは猫ちゃんのためにぐっと我慢しましょう。
猫ちゃんの場合、叱られたことでストレスになり、おしっこをすること自体を我慢するようになることもあるんです。
一般的に猫は特別にしつけをしなくても、自分のにおいを隠せる、砂があるトイレで排泄してくれます。
そこでトイレをできない、しない場合はトイレに何か問題がある可能性があります。

●どうしてトイレでおしっこしないの…?
トイレがあるのにも関わらず、トイレでおしっこしてくれない場合、ねこちゃんにとってそこでトイレをしたくない原因がある可能性があります。
‐考えられる原因‐
・場所が気にいらない(近くで物音がする、落ち着いて排泄できる環境でない)
・砂の材質が気に入らない
・トイレの形状や数の問題
・トイレの汚れが気になる
・他のねこのにおいがする
・その他何か嫌な原因がある
(トイレしているところを人に見られた、子供に追いかけられた、など)

●トイレの砂の材質
猫トイレの砂には、紙砂、シリカゲル、おから、木、鉱物のもなどいろんなタイプの砂があり猫ちゃんの好みも様々です。
お家の猫ちゃんの好みに合わせて砂を用意してあげましょう。
ちなみに我が家の猫たちは鉱物系の砂が好みですが、鉱物系の砂のメリットは多頭飼いにはありがたいことに比較的安価なことと、しっかり砂が固まってくれるのでトイレ掃除も楽です。しかしデメリットとしては、砂が舞うのでトイレ周りの掃除をこまめにしないといけないのが難点です。そしてなにより、砂が重たいのでゴミの日は大変です…。
また、トイレの数は「猫の頭数+1」が理想とされています。
1匹だったらトイレは2個、2匹であれば3個…となりますが、多頭飼いのお家ではたくさんトイレを用意するのはなかなか難しいかもしれませんね。
猫ちゃんは特に綺麗好きな生き物ですので、できるだけきれいなトイレを用意してあげられるように心がけましょう。

●猫の下部尿路疾患(FLUTD)
・トイレに問題はないのに、おしっこできない!そんなときは病気のサインかもしれません。
膀胱から尿道にかけての病気を総称して、FLUTD(猫下部尿路疾患)といいます。
細菌感染による膀胱炎、尿石、原因不明の特発性膀胱炎などがありますが、排尿時に痛みが出たり、血尿が出たり…。猫ちゃんではよくある病気のひとつです。

●こんな時は緊急事態!
トイレでいきんでいるのにおしっこが出ない、ポタポタ程度のおしっこしか出ていない。こんなときはすぐに処置をする必要がある可能性が高いです。
特に若い男の子の猫ちゃんは尿道が細く長いので、おしっこが出ていない場合、尿石症によって尿道閉塞になっていることが疑われます。すぐに処置をしないと命に関わる病気です。

●猫ちゃんの腎不全
おしっこの病気に続き、今度は腎臓の病気についてです。
おしっこが出ないのも病気のサインですが、それとは逆におしっこの量が多いのも病気のサインのひとつです。
特に高齢の猫ちゃんでおしっこの量が増えた場合、慢性腎不全が疑われます。
腎臓にはネフロンという組織があります。そこで血液中の老廃物をろ過したり、おしっことして排出する大事な役割をしています。そのネフロンが少しずつ壊れて、腎臓全体の機能が低下してしまうのが慢性腎不全という病気です。
残念ながら腎臓の組織はいったん壊れてしまうと元にもどることはありません。
高齢の猫ちゃんで、水をたくさん飲み、おしっこの量が増えた、元気・食欲がなくなった、という症状がみられましたら、もしかしたら慢性腎不全の可能性があるかもしれません。
症状はなくても血液検査や尿検査を行うことで早期に発見できることがあります。
慢性腎不全以外の病気でもおしっこの量が増える病気もありますが、普段からおしっこの量や色など気にしておくと良いですね。

当たり前のことですが、猫ちゃんは人のようにお話しすることができません。
苦しかったり、痛かったり、トイレに不満があっても直接言葉にできない猫ちゃんの気持ちを分かってあげられるのは、やはりいつも一緒にいるお家の人です。
正直、トイレ掃除をするのは気が進むようなことではありませんが、普段からおしっこの色合いや砂の塊の大きさなど気を付けてみてあげたり、いつもと違う様子はないかよく観察することが一番の病気の早期発見につながるかもしれません。
何か気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

高齢ねこちゃんに多い病気―甲状腺機能亢進症―

こんにちは。当院で一番のネコ好きを自負している看護師の阿部です♪
ネコ学を少しづつ勉強しながらネコ飼いの皆さまにココで情報発信できればと思っています。今回は、高齢ねこちゃんに多い病気として、甲状腺機能亢進症についてまとめてみました。ご興味のある方は是非お読みください!

最近では、人と同じようにねこちゃんも高齢化が進んできています。
猫ちゃんの平均寿命は約15歳とも言われていますが、20歳くらいの猫ちゃんをみかけることも少なくありません。人の年齢に換算すると96歳!すごいことですね。
10歳以上の高齢猫ちゃんに多い病気のひとつに甲状腺機能亢進症という病気があります。
お家の猫ちゃんで、ごはんはたくさん食べるのに最近痩せてきた、落ち着きがなく活発になった、攻撃的になり性格が変わった、という症状はありませんか?
今回はその甲状腺機能亢進症についてお話ししたいと思います。

●甲状腺機能亢進症ってなに?
・甲状腺の腫瘍化、過形成が原因で生じ、甲状腺ホルモン(体の代謝を上げるホルモン)の分泌が異常に活発になる病気です。

●主な症状
・食欲が異常に増える、その割には痩せてくる
・水をたくさん飲む
・尿量が増える
・毛づやが悪くなる
・落ち着きがない
・攻撃的
・目つきがギラギラしている、などです。

●診断
血液検査で甲状腺ホルモンの数値を測定することでわかります。
高齢の猫ちゃんではその他の疾患が隠れていないかどうか腎臓や肝臓など全体的な血液の数値をみて評価する必要がある場合があります。
●治療
根本的治療として手術で甲状腺を切除する外科治療と、甲状腺ホルモンの合成を阻害するお薬を投与する内科治療があります。
※外科治療だと麻酔をかけての処置になるのでどうしても麻酔のリスクがあり、お薬を投与する内科治療でも、高齢の猫ちゃんの場合、腎性高血圧を併発していることが多いので慎重にお薬の投与を行わなければなりません。

実際に私が昔飼っていた猫がこの病気でした。
上記の通り、異常な食欲でごはんをあげてももっと食べたがり、その割にはガリガリに痩せてきて、いつもは寝ているのに急に家中走り大声で鳴き、とにかく元気!というのが印象的でした。
最初はこの病気のことを知らず歳のせいかな?と思っていました。

残念ながらうちの猫は19歳で亡くなってしまいましたが、小さいころから一緒に育ってきたので猫が17歳のときにこの病気だと発覚した時は、うちの子もそんな歳になってしまったんだなあとなんだか寂しくなった記憶があります。

ずっと一緒に暮らしてきた大切なねこちゃんだからこそ、歳を取っても少しでも元気でいてほしいですよね。

みなさんのお家のねこちゃんで、「うちの子もこんな症状あるかも!」「もう歳だからうちの子もなんだか心配」、という方がいらっしゃいましたら一度ご相談ください。
キャプチャ

 

看護師セミナー3 概論①

こんにちは。看護師の坂本です。
不安定な天気が続いていますが皆様いかがお過ごしですか?
今回は概論として、動物看護師というまだまだ認知度の低い職業がどのようなものなのか、どんな知識を持っているべきなのか。また、全24回の講座で疾病として分類されていない腫瘍の定義や高齢犬の介護などについてを学んでまいりました。

概論は分野が広く多いので3回に分けてお伝えさせていただきます。
概論①として今回は動物看護師について、動物の体の基本的な構成、神経・骨格・筋肉についてまとめました。

以下内容
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概論

概論では動物看護師の職業について、動物の体のしくみや簡単な解剖学について、担がん動物の看護,がんについて、高齢犬の看護についてなど疾病としてわけられていない分野についてを学ぶ。

動物看護師とは…大体の方に獣医師のお手伝いさんと思われているが、動物看護師は動物医療の最前線で活躍する専門職である。動物の全てのライフステージ(健康な時から終末期まで)に関わり、動物達が健やかな一生を全うするように援助する事が出来る重要な職業。

身体の構成,解剖学
全ての動物の体はいくつもの細胞が集まって出来ている。
この細胞達は死ぬ時期を決められて生まれ、ルールに従い少しずつ新しく生まれ変わっている。癌細胞はその中のルールに従わず死なずに増殖していく特徴を持つ。
動物の健康状態と、この細胞達1つ1つが正常な働きをすることで保たれる。病気が現れた時は、急に細胞達が異常になったわけではなく、異常と正常の中間の状態もあったはずである。その中間の状態を適切な観察によって早期に発見して、早期治療に結びつけることも動物看護師が出来る仕事の一つである。
そのためには細胞の機能、動物の骨格や筋肉、神経について専門の知識を持っている必要がある。また保定や体勢を考える時に、動物の身体がどのように動く事が出来るのか、楽なのか考える時には同様に構造を考えると良い。

神経系の構造,機能

神経系は、感覚器官から届いた刺激を感じそれに対した指令を筋に出す役割を持つ中枢神経と、感覚器官からの刺激や中枢からの命令を伝える役割を持つ末梢神経にわけられる。中枢神経は脳と脊髄の事で、末梢神経は脳,脊髄から出ている神経の事。

・中枢神経 脳
脳は3層の髄膜に覆われており、大脳、小脳、脳幹にわけられる。脳脊髄液は、脊髄の中心管を通って脊髄内にも循環しているため、脊髄穿刺による髄液検査によって脳の情報を得る事が出来る。脳は動物個体によって大きさが異なるが、臓器の中でも非常に重要な臓器である。

・中枢神経 脊髄
神経線維の束で、脊柱管の中にある。脳と同様に3層構造に覆われている。
腰椎の上部までは脊髄があるが、腰椎の下部(約4分の3の位置)から尾までは馬尾と言われる細い神経の束となり髄腔内に浮かんでいる。
脳に情報を伝え、脳から出された指令を他から入ってきた情報と統合し、他に指令を出す。脳脊髄検査とは、腰のあたりから脳脊髄液を採取することで、脳の情報を知ることの出来る検査である。

・末梢神経 脳神経
脳から繋がっている神経で、12対ある。

・末梢神経 脊髄神経
脊髄の各文節から左右に1対ずつある。頭に近い神経は主に前肢に作用し、尾に近い神経は主に後肢に作用している。脊髄が損傷を受けると、その部分から下の脊髄には脳からの指令が届かなくなるため、対応している部分に麻痺が生じる。

・末梢神経 体性神経系
筋肉の調節にかかわる運動神経と、知覚情報に伝える感覚神経にわかれる。
通常は感覚神経によって感じた情報を末梢から中枢の脊髄から脳へ順に伝え、脳からの指令がまた逆方向に伝えられる事により身体が動く仕組みになっている。
だがそれでは間に合わないとからだが判断した時、脳に伝える前に反射神経の中の神経で判断し身体を動かす反射と呼ばれる行動で身体を守る。熱いものに触れて手を一瞬で遠ざける行動が代表的だが、正しい姿勢を保とうとする姿勢反射等もこの反射の一つである。

・末梢神経 自律神経系
自律神経は不随意(無意識で、本人の意思に関係なく行われる事)で、交感神経と副交感神経に分けられる。この2つは基本的な生命活動であり、中枢は脳幹にある。互いに拮抗する働きをしていて、それぞれの神経が同一の神経に繋がっているので両方とも亢進するという事はない。
・交感神経は、心拍数や呼吸数を増やすなど循環器系の働きを促進させ、身体を興奮状態にさせるなど、身体をアクティブにさせる働きがあり
・副交感神経はリラックスしている時に働き、血圧の低下や消化機能の活性化など交感神経と拮抗して、身体を穏やかにさせる働きがある。

骨格,筋の構造と機能
いくつもの骨が組み合わさって出来ている骨格は、しっかりとした身体の骨組みをつくるのと同時に、内臓などの軟らかい組織を守る働きもしている。骨は身体の中で歯のエナメル質の次に硬く、その硬さを作っているのがリン酸カルシウムである。骨の表面は繊維組織で出来た骨膜で覆われており、この骨膜は骨の直径を厚くし骨を守る、骨折時の治癒を行う働きをしている。
骨の数は犬で約320個、猫で約230個ある。身体の大きさに違いがあっても、骨の太さや長さに違いがあるだけで、数は変わらない。

・骨の役割は、身体を支える・器官を保護する・運動を支える・造血する・カルシウムの蓄え である。この全てが身体を動かす上で重要な役割である。骨も他の器官,細胞とと同じで、一度作られたものが一生使われる事はなく日々生まれ変わっている。形成、破壊、吸収を繰り返していて、若齢動物では特に代謝が速い。
このように、骨にも細胞が存在するため生まれ変わったり、骨折しても治癒する。骨の代謝には骨の主成分であるカルシウムの存在が必要不可欠である。

・この骨同士を繋げているのが関節である。骨の端同士の間の事を関節腔と言い、関節包で包まれている。関節包の中には滑膜に覆われた滑液と呼ばれる粘張性の強い液体があり、これで関節の動きを滑らかにしている。
関節炎の際にはここに滲出液がたまり、関節が腫れている。
関節の中には靭帯があり、それで可動する方向が決められている。

・身体を動かすための中心的な組織が筋肉で、心臓や内臓を動かしているのも筋肉。
筋肉には随意(自分の意思で動かす事が出来る)筋と不随意(自分の意志では動かす事の出来ない)筋がある。 随意筋は骨格を動かす骨格筋のみで、不随意筋は内臓や血管の壁をつくりそれらを動かす平滑筋と心臓を動かす心筋が含まれる。

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いかがでしたでしょうか。
骨格や神経系については基本的な知識なのですが、用語が複雑で読み辛かったと思います。
また後日の講座で整形外科の講座がありますので、そこでもう少し詳しく学べるのではないかなと思っております。

次回は概論②で腫瘍についてをまとめてお伝えさせていただきます。

看護師 坂本恵

看護師セミナー2 皮膚Ⅰ

こんにちは。看護師の坂本です。
前回の口腔学Ⅰいかがでしたでしょうか。
私達動物看護師が学校で学ぶ基本的な口腔内の構造についてがメインの講座でした。

今回は皮膚学Ⅰです。
こちらも2日間に分けての講座になるため、1回目の今回は基本的な構造、全体的な皮膚疾患の特徴の講習になりました。

以下が講座内容になります。
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文部科学省委託事業 動物看護士および動物系職業人向け 学び直し実証講座

皮膚Ⅰ

皮膚の構造としくみ

皮膚は爪や被毛などと共に外皮系に含まれ、動物の最も面積の大きな器官。体重の約20%を占める。
周囲の環境(気温や痛みなど)の情報を脳に伝える役割をしていると共に、外界から身体を守る働きを担っている。
皮膚の厚さは身体の部分によって異なり、前頸部から尾根部にかけての背線部(地面から遠い上の方)の皮膚が厚く、外耳や鼠頸部、肛門周囲などの皮膚は布のように薄い。
皮膚が厚い所の方が痛みに強く、注射や皮下点滴などを背中の方にするのはこのためとなる。

皮膚は表皮,真皮,皮下組織の3層に分けられ、表皮はまたそこから細胞の成長と共に4層に分けられている。表皮の最下層で新しい細胞が生まれ、最上層(角質層)で角質となり皮膚から剥がれ落ちる事を、ターンオーバーと言いこの期間は動物により異なる。犬や猫で20~25日(約3週間)である。犬猫の角質層の厚さは人の2~3分の1しかなく、皮膚疾患が多い原因はこれである。この角質層にはセラミドと呼ばれる細胞同士をくっつける保湿成分があり、これらが不足または壊れると皮膚が乾燥しカサカサになったり皮膚炎の原因になったりする。
最も負荷のかかるといわれる肉球も皮膚の構造をしているが、肉球にのみ淡明層と呼ばれる層があり特殊な構造をしている。
犬の爪は人の3倍の速さで伸びると言われ(全く歩かなかった場合1週間に1.9mm伸びる)、加齢とともに遅くなる傾向があるとは言われているが、定期的に管理する必要がある。
また猫は爪とぎをしても層状に剥がれていくので、先端が丸くなる事がなく、高齢猫は爪とぎでも層がはがれない場合があるので犬と同様に定期的に管理する必要がある。
人ではビタミンDの合成のため日光(紫外線)に当たるが、犬の場合は合成に必要な細胞が少なく、また被毛があり直接皮膚に日光が当たるわけではないので人ほど活発ではない。だが全く出来ないわけではないので適度な日光浴は必要である。

皮膚疾患の観察事項

皮膚疾患は消化器症状などとは違い、見た目に炎症がわかる疾患が多いがその中でもどのような病態なのかを詳しく判断するためにはしっかりとした問診や観察が必要である。ポイントと注意事項は、

品種
→疾患によってなりやすい犬種などもある(シーズー,柴犬のアトピー性皮膚炎やゴールデンの膿皮症など)

性別,避妊去勢の有無
→停留睾丸による脱毛や未去勢犬のアロぺシアX(原因不明の脱毛症。未去勢3kg以下のマズルの短めのポメラニアンに起こりやすいと言われる)などの可能性。

発症年齢
→食物や環境のアレルギーなどのアトピー性皮膚炎の初発症年齢は基本的に3歳以下が多く,高齢になるにつれホルモン性の脱毛や腫瘍性疾患の可能性が増す

食事(おやつ含)種類や環境変化
→変化による新しいアレルゲン関与の可能性

予防歴
→北海道では少ないがノミのアレルギー,お薬のアレルギーなど

治療歴,経過,治療歴,
→初症状なのか,いままでの治療で完治しているのかなど

同居動物
→同居動物や飼い主さんも一緒に痒みが出ていたりしないか,相性の問題があり心因性の脱毛の可能性がないか

症状種類(痒み有無,赤み有無など),痒みレベル
→痒みがなく赤みだけが広がったり,発疹など様々なパターンがある

固定時間帯の有無
→夜寝る前のみ痒いなど時間帯が限定されていることもある

元気や食欲,飲水量など
→加齢につれ,甲状腺や副腎の機能が低下または亢進してしまいホルモン性の脱毛を起こす事がある。

皮膚色
→赤い炎症のものや、炎症後皮膚のメラニン色素が集まり炎症を起こした部分の皮膚が黒くなっていることある

心配な事、他
→人や同居動物に感染するのかなど心配事は人によって様々であり、その心配事を少しでも取ってあげる事が動物看護師の重要な仕事の一つ。

このように一つの問診でも色々な可能性の割り出しが出来るので、動物看護師として疾患の可能性を考えながら問診し、飼い主さんの不安や動物達のストレスを減らしてあげる努力をしていくこと。

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いかがでしたでしょうか。

今回は前回の口腔学Ⅰと同様に、基本構造や皮膚の基本的な特徴の講習でした
次回の皮膚学では個別に疾患の特徴などが学べる予定です。看護師向けの学び直し講座になるので、治療法など具体的な事ではないかもしれませんが、また今後もまとめお伝えしていきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

看護師 坂本恵

看護師セミナー

こんにちは。看護師の坂本です。
今月から始まる文部科学省委託事業の動物看護士および動物系職業人向け学び直し実証講座(全24回)に参加をさせていただく事になりました。専門的な内容になるので難しいところもあると思いますが、学んできた事をまとめましたので皆さんにもお伝えさせていただきます。(大切なわんちゃん、ねこちゃんのため少しでも力になれればと思います。)

座出席のため、夕方17時以降の看護師の人数が減ってしまうため、待ち時間等でご迷惑をおかけすることがあるかと思いますので、予めお詫び申し上げます。

一回目は口腔学Ⅰということで主に口腔内の構造や機能についてまとめてみました。

 口腔内の構造,機能,しくみ

①舌
・消化運動,嚥下運動動かすことにより食べ物を咽頭へ運び嚥下する。
・嚥下運動には随意的に動かせる段階とそれに続く不随意的段階がある。
このように舌の前面以外は自分でコントロールすることが出来ない。なので、経口投薬時に舌の奥の方にお薬を乗     せる。そうすると、本人の意志とは関係なく呑み込んでしまうので口を開けてくれる子は、簡単に投薬が出来るとされている。

・味覚
味らいという構造部分で酸味,甘味,苦味,塩味がわかる。味らいの数は動物の種類で異なり、人は10000個以上と言われているが犬で1700個、猫で500個と言われている。なので、犬や猫は味を楽しむというより主に、有害物質の存在の判断をしていると言われている。

・体温調節機能
舌を湿らせることで熱を放散させている(主に犬)

②唾液線
唾液線には耳下腺、顎下線などを代表とする大唾液線,口唇線などの小唾液線の2種があり、唾液には免疫グロブリンが含まれる。唾液の機能としてはプチアリンによるでんぷん(炭水化物)の消化作用(人のみ)

・口腔内の湿潤作用
乾燥状態が続くと口腔内からの疾患の感染が成立してしまう。犬の場合は体温調節のためにも必要。

・食物の軟化作用と粘膜の保護作用
・リゾチームによる殺菌作用
・フッ素による虫歯予防

③口腔内リンパ
口腔内にもリンパ節は存在しており、口腔から咽頭にかけてリンパ組織がある

④口腔内軟部組織
歯肉,舌,軟口蓋,硬口蓋などがある

⑤歯
動物により歯の数や形は異なる。

歯の構造
・歯冠
歯肉から上に出ている部分を歯冠と呼ぶ。
・エナメル質
口に入った食べ物を飲み込むために裂いたり噛み砕いたりするため、身体の中で一番硬い組織であるエナメル質が一番外側の層として出来ている。95%以上がリン酸カルシウムで構成され、知覚はない。破折しても修復力はなく、加齢により表面が摩耗する。硬いものを咬む子は若齢でも摩耗し露髄する事がある。
・象牙質
エナメル質の中で歯髄を覆う組織で、コラーゲン組織とリン酸カルシウム結晶により構成されている。修復機能がある。
・歯髄
神経,血管,リンパ管が通っている組織。破折などにより歯髄が露出することを露髄と言う。露髄した状況を放置すると、歯髄炎や歯髄壊死を起こすこともある。
・歯根
歯冠から下、歯肉に覆われた部分の事を歯根と呼ぶ。
・歯周辺組織
・セメント質
骨に似た組織で歯根部の象牙質を覆う。
・歯根膜
歯が受けた刺激が直接歯槽骨に伝わらないように衝撃を緩和する機能がある。実際は膜ではなくコラーゲン線維(靭帯)によって歯と骨をつなぐ。
・歯槽骨
歯を支えている頭蓋骨の一部。

歯の種類
・切歯
一番前の歯。
・犬歯
最も長い歯。上顎下顎に2本ずつ計4本ある。犬より猫の犬歯の方が尖って細い。
・前臼歯、後臼歯
犬歯から後ろにかけてある歯。

口腔構造は、口腔→咽頭→食道への消化器系構造と、口腔→喉頭→気管への呼吸器系構造の2系統の重要な役割を担っている。このため口腔内を健康を維持する事は非常に重要である。

・歯の数
犬で合計42本
猫で合計30本

口腔内診療問診ポイント

3歳以上の犬猫の80%以上が歯周病をもっているとされているが、飼い主が気付いていない事がほとんどである。大型犬よりは小型犬の方が発症しやすく進行も早い。犬猫の行動を観察または問診で歯科疾患を疑うべき症状口が臭い、食べ物を残すようになる、食べたそうだが食べない、顔を触られるのを嫌がる、くしゃみをする、前肢で顔や口を擦るなどがあげられる。また同居動物の有無や、食物の内容、飼育環境などを問診し感染症や食物による口腔内の負担がないかなども確認しておく必要がある。

上記のような症状は他の疾患でも見られる行動なので必ずしも歯科疾患とは限らないが、考慮には入れておくべきである。言葉を発する事が出来ない動物達が違和感を抱えているサインを逃さないようにすることも動物看護士の重要な仕事である。

いかがでしたでしょうか?

今回は構造の名前など専門的な用語が多かった口腔学Ⅰですが、今後口腔学Ⅱという歯科疾患についての検査や原因治療対策などが学べる予定です。今後も参加したものをまとめてお伝えしていこうと思いますので興味をもたれた方は楽しみにしていていただければと思います。何か気になる事がありましたらいつでもお気軽にお問い合わせください

              

看護師 坂本恵