犬では、体表にできるしこりのひとつで、毛穴から発生するものがあります。皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に皮質や角質がたまることで、しこりとして触れるようになります。犬では遭遇することの多いしこりですが、猫では非常に稀に尾に発生することがあると言われています。
このしこりは、非腫瘍性の嚢胞(人では粉瘤やアテロームと呼ばれています)や良性腫瘍であることが多いのですが、稀に悪性腫瘍と診断されることもあります。
しこりの大きさは数ミリ~数センチまで様々で、内容物が多くなるにつれて少しずつ大きくなったり、同時に複数発生することもあります。内容物が多くなると、皮膚が破れて内容物が飛び出たり、炎症をおこし周囲の皮膚に赤みや痒みが生じることがあります。突然、体表から出血し、初めてしこりがあったことに気が付くというケースもあります。
悪性度が高いほど、より強く炎症を起こしやすい傾向がありますが、良性腫瘍の場合でも同様の症状が見られることもあるため、炎症の有無だけでは良悪の区別をすることはできません。
診断
毛穴の腫瘍の場合には、細胞診にて「消しゴムのかす」や「歯磨き粉」のような見た目のものが採取されます。それらを顕微鏡で観察すると、角質や皮質の成分が検出され、毛穴由来の嚢胞または腫瘍であることがわかります。
治療
嚢胞や良性腫瘍の場合、手術にて袋ごと切除することで再発の可能性はなく、予後良好であるとされています。また、しこりが小さく破れていない場合には、手術を行わず内容物を絞り出すこともありますが、袋が残っているためまた内容物がたまるようになります。
多くの場合が、良性であるため急いで切除しなければならないわけではありませんが、破裂を繰り返したり、大きくなるようであれば(数センチ以上)早めに切除することをお勧めします。また、非常に稀ですが、はじめは良性腫瘍であっても悪性腫瘍に変化する可能性があることや、しこりが小さいほど手術の負担は少なく、局所麻酔でも切除できる場合も多くあるため、早めの切除も選択肢のひとつであると考えています。
悪性腫瘍の場合は、周囲の正常な組織も含め広く切除することで、術後これまで通り元気に過ごすことができる場合も多く見られますが、稀にリンパ節や骨、肺などへ転移することもあるため術後の経過観察が必要となります。
高齢の犬では毛穴にできる腫瘍以外にも、体表に様々な種類のしこりができやすいため、しこりを見つけた際や、以前からしこりがあるが様子を見ていても大丈夫なのか心配な方など、どうぞお気軽にご相談ください。