こんにちは、看護師の柴田です。
今回は「ケラトラックス」という薬用シャンプーをご紹介させていただきます。このシャンプーは『角質溶解シャンプー』と呼ばれるもので、名前から想像できるかと思いますが角質を溶解(柔らかくし除去する)してくれるシャンプーです。またマイルドな脱脂作用もあるため臨床現場では『脂漏症』の子にしばし使われています。
ケラトラックスの成分には「サリチル酸」と呼ばれるものが配合されていて、この成分が角質に浸透することによって角質が柔らかくなり、除去しやすくなります。また、皮脂の過剰分泌を抑制をしてくれる「ビタミンB6」や「グルコン酸亜鉛」も配合されているので脂漏症の子には使いやすいシャンプーになっています。
ではなぜ脂漏症の子は角質溶解作用や脱脂作用のあるシャンプーが使われるのでしょうか。
ここで少し脂漏症のお話をさせていただきます。
○脂漏症とは
脂漏症とは先天性もしくは後天性に皮膚の角化異常が起こる皮膚疾患です。新しい皮膚が生まれてフケになるまでのサイクルをターンオーバーと言いますが、正常な子のサイクルはおよそ22日間に対し脂漏症の子はおよそ8日間と正常な子よりも極端に短くなってしまっています。つまり脂漏症の子は正常な子と比べて皮膚の誕生からフケになるまでのスピードが3倍早いということになります。3倍早いということはその分フケも多くなりますし、フケだけではなく皮膚の中の脂腺も増えてしまいベタベタした皮膚になってしまったり、逆に脂腺は増えず乾燥した肌になることによって乾燥を防ごうと結果的に過剰に皮脂を分泌してしまいます。
これらの過剰なフケや皮脂はそのままにしておくと、細菌たちの栄養となってしまい繁殖を引き起こし感染症の原因になってしまったり、炎症や痒みを誘発させてしまうのです。
○脂漏症の分類
脂漏症は主に「乾性」と「油性」に大きく分けられ下記の特徴があります。
乾性脂漏症
・フケの増加
・皮脂の分泌の低下
・皮脂の質の低下
脂性脂漏症
・フケの増加
・過剰な皮脂の分泌
ここまでのお話で脂漏症の子は過剰に出てしまうフケと皮脂を悪者にしたようにしてきましたが実は全部が悪いと言うわけではありません。
○皮脂って悪者?
過剰なフケや皮脂が細菌の繁殖に繋がってしまうとお伝えしましたが、実は皮膚にとって皮脂は健康を保つ上でとても重要な役目を持っているんです。本来皮脂は体表で、皮脂膜と呼ばれる皮膚バリアーを生成していて、皮脂膜は皮膚や被毛を保護・保湿してくれているのです。さらに、有害物質や感染からの防御にもその役割を果たしていて、体内環境の安定に寄与してくれています。このため、いかに過剰な皮脂を除去し、皮膚バリアーを維持してあげる、もしくは形成の手助けをするかが治療のポイントとなってきます。
◯スキンケアの基本
乾性、脂性に共通して過剰なフケを取ってあげることが基本となります。さらに、脂性の場合は、過剰に分泌されている皮脂を取る事を追加します。ただ、過剰に分泌されている皮脂をちょうどよく除去することは難しく、皮脂を除去すると乾燥し、乾燥するとさらに皮脂が出るという悪循環が起こることもあります。このため、皮膚の様子を観察しながら、乾燥する場合「保湿ケア」も合わせて行っていきます。
脂漏症の治療は、皮膚の変化を見極めながら、その子その子に合わせて、外用薬や内服薬、スキンケアを上手に組み合わせる事が大切と言えます。
私自身もスキンケア治療でケラトラックスシャンプーを使っていますが、使用後はその子の皮膚が柔らかくなりさっぱりした印象を持っています。
脂漏症に限ったことではないですが皮膚のトラブルを抱えている子たちは外用薬や時には内服薬を併用して治療をしていることもあると思います。中には薬の代わりとしてスキンケアをする事で良くなってくれる子もいますので何か気になることがあればご相談してみてください。
