こんにちは。看護師の坂本です。
今回は内分泌についてまとめました。内分泌疾患はホルモン疾患と呼ばれることもあります。
内分泌疾患は発症すると基本的には生涯治療が必要な疾患が多いです。
治療前に、または治療中の方も、どんな疾患なのか、どんな症状があるのか知ってみてください。
以下内容
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内分泌とは、体内で化学物質を産生・分泌する細胞から、直接血液中に化学物質が放出される現象で、内分泌系とは体内で分泌されるホルモンを産生・分泌している器官。下垂体、松果体、甲状腺、上皮小体、副腎がある。また卵巣、精巣、膵臓、胎盤は他にも重要な機能を持っているが、内分泌によってホルモンも産生・分泌している。
内分泌系の器官はいずれも小さく、細胞が直接または袋状に配列した内分泌腺と呼ばれる組織から形成されている。通常これらの細胞の間には豊富に毛細血管が分布され細胞と血管が直接接している。細胞から血液中に分泌されたホルモンは全身に運ばれ、そのホルモンが情報を伝達すべき標的臓器に到達し、そこで初めてホルモンが作用する。代謝変化や他のホルモンを分泌させるなどの働きをする。到達するホルモンがごく微量でも作用し、長期にわたっての作用が可能となっている。標的臓器以外に到達した場合では、極めて高い濃度であっても作用しない。様々に変化する体内外の環境に対応するためには、内分泌腺も微妙に変化させ標的の機能を調節し適応する必要がある。そのため内分泌系と神経系は互いに連絡・強調し合うことにより環境の変化に対応しているが、内分泌系にはフィードバック機構という単独で自身を調節する仕組みもある。
内分泌系疾患ではそれぞれの病気により検査、治療、看護方法が異なるので動物を十分に観察し必要にあわせた看護を行う。原因によっては、治療が長期間または生涯続くこともある。十分に治療、看護方針について話し合い相談する必要がある。
甲状腺の機能・構造
甲状腺は咽喉頭部に近い気管の外側に付着している。左右一対で中型犬でも縦5cm、厚さ0.5cm程度の小さい器官。濾胞細胞という細胞が袋状に配列した構造を持っており、その濾胞細胞が甲状腺ホルモンを産生・分泌している。分泌された甲状腺ホルモンはコロイドとして貯留され、必要に応じて血液中に放出される。濾胞間を埋める組織中にある傍濾胞細胞からは血中カルシウム濃度を低下させるカルシトニンというホルモンが産生・分泌されている。
甲状腺ホルモン
チロシンというアミノ酸とヨードから合成されている。食事中から摂取されるヨードはそのほとんどが甲状腺ホルモンの材料にされる。類似した作用をもつ、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロ二ン(T3)という2つのホルモンがある。
甲状腺ホルモンの作用は、生体の代謝機能に対して様々な作用を持ち、体温の調節、体の成長、糖質・たんぱく質・脂質の代謝促進、心臓の代謝促進、皮膚の代謝促進などの恒常性に寄与している、全身の代謝を上げるホルモンである。
副腎の機能・構造
左右の腎臓のすぐ前方に位置する小さな器官。発生学的にも機能的にも全く異なる外側の皮質と、内側の髄質の2つの部分から形成されている。
副腎皮質
外側から球状帯、束状帯、網状帯という3つの層から形成され、それぞれ異なったホルモンを分泌している。これらのホルモンをステロイドホルモンといい、コレステロールから合成される。
球状帯では電解質コルチコイド(鉱質コルチコイド)というホルモンが産生・分泌されるがこれは1つのホルモンの名称ではなく、電解質代謝に対する作用が強いホルモンの総称。その代表はアルドステロンで血圧の調整なども行う。電解質コルチコイドは様々な作用を持つが、すべて血圧の調節に深く関与する。
束状帯では糖質コルチコイド)というホルモンが産生・分泌され、これも同様に糖代謝に対する作用の強いホルモンの総称。代表がコルチゾール。生体内の糖代謝の調節を行う。下垂体前葉で産生・分泌されるACTHにより分泌が促される。
網状帯ではわずかであるがアンドロゲンやエストロゲンなどの性ステロイドホルモンを産生・分泌する。
副腎髄質
神経組織から発生しており、交感神経節後ニューロンの細胞体に相当する。アミノ酸のチロシンから、アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリンを産生・分泌する。ストレスによって交感神経が興奮した場合に大量に分泌され、生体がストレスに順応できるようにしている。また血中ブドウ糖濃度の低下いよっても促進される。
膵臓の機能・構造
肝膵資料参照
代表的な疾患
甲状腺機能低下症
甲状腺から甲状腺ホルモンが正常に分泌できなくなる。犬で最も多くみられる内分泌系疾患で、猫ではまれ。原因のほとんどが、リンパ球性甲状腺炎や特発性甲状腺委縮、まれに腫瘍と言われている。まれに先天的なものもあるが、そのほとんどが4歳齢以上になってから発症する。特にゴールデン、ラブラドールなど大型犬での発生が高い。
症状は脱毛、膿皮症、脂漏性皮膚炎、筋委縮、肥満、低体温、活動量の低下など。脱毛はターンオーバーの低下が原因なので、痒みの伴わない左右対称の脱毛でだんだん黒色に色素沈着する。
治療は甲状腺ホルモン製剤の投与。食事療法。投薬は一生涯継続する必要があるため、薬剤量や投与回数は犬の状態や投与者の不安を考慮し選択する。
他の内分泌系疾患を併発している場合、投与に注意が必要。動物が肥満している場合には低脂肪食を与える。甲状腺機能低下症は、適切な管理をすればほとんどの症例で症状が改善されるが、生涯投与と、定期的な甲状腺ホルモン量の測定が必要になることをしっかり説明する。
甲状腺機能亢進症
甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌される。7歳以上の高齢猫での発生が多く、犬ではまれ。甲状腺が腫瘍化することで発生する。98%が腺腫、2%が甲状腺癌。
症状は筋肉量の低下による体重減少、被毛粗剛、多飲多尿、活動性の亢進または虚脱、多食、腫大した甲状腺の触知など。嘔吐、下痢や食欲不振など消化器疾患と区別がつきづらい症状を示すこともあるので注意が必要。
治療は甲状腺ホルモン合成阻害薬(チアマゾール)の投与。外科手術。過剰投与された場合、甲状腺機能低下症の症状を示す。さらに血圧が低下し、腎臓の血流量も低下するため、隠れていた腎不全が顕在化することがあるので注意。外科摘出後、左右両方の摘出を行った場合、不足する甲状腺ホルモンを補うため、一生涯甲状腺ホルモンの投与が必要になる。適切な治療を行えば比較的症状が改善されることが多いので、途中で投薬を中止しないように、飼い主家族に対して十分に説明する。薬の投与が難しい場合には、ヨードの含有量が少ない療法食もあるので提案する。
過剰投与になっていないか、副作用が出ていないかの確認は毎回しっかり行い、定期的な甲状腺ホルモン量の測定が一生涯必要になることも合わせて説明する。
副腎皮質機能低下症
アジソンと呼ばれ、副腎皮質からの糖質・電解質コルチコイドの分泌が減少した状態。若齢から中年の雌犬で多く発症する。猫ではまれ。原因としては副腎皮質自体の破壊や萎縮が起こる原発性のもの、脳下垂体が原因でおこるもの、医原性のものがある。症状は電解質異常による低ナトリウム、高カリウム血症からの心機能低下、徐脈、心停止。その他にも嗜眠、ふらつき、体重減少、元気食欲不振、消化器症状など。両側の副腎が同時に障害を受けた時、突然の脱力、意識障害、ショックなど急性副腎不全をおこし、早急な治療が必要になる場合もある。治療は、急性型の場合は輸液とステロイドホルモンの投与。慢性型の場合は電解質コルチコイドの生涯投与。定期的な電解質の検査。またストレスが急性副腎不全の危険性を高めてしまうので環境を整えなるべくストレスのかからないよう生活を継続する事が大切。投薬の重要性をしっかりと伝え、投与ミスや吸収不良により再発する事もある説明も必須。
副腎皮質機能亢進症
クッシングと呼ばれ、糖質コルチコイドの分泌が過剰になった状態。7歳以上の高齢犬にみられることが多く、全ての犬種で発症するがプードル、ダックスフンドに多い。原因は様々だが、下垂体の腫大によるACTHの過剰分泌が80~90%。副腎の腫瘍化が10~20%に大別される。またステロイド性抗炎症薬の長期投与による医原性のものもある。
症状は左右対称性の脱毛、被毛粗剛、筋委縮、多飲多尿、腹部の下垂膨満、多食、石灰沈着、元気消失、パンティングなど。クッシング症候群の90%以上に多飲多尿がみられ、飲水量が体重1kgあたり50mlが1日の通常量で、1kgあたり100ml以上飲むようであれば、多飲と判断して良い。また症状の似ている、甲状腺機能低下症や糖尿病を併発する事もあるので注意が必要。
治療は、別の疾患により引き起こされている場合はその基礎疾患の治療が第一。内科療法として、トリロスタンの生涯投与。定期的なコルチゾール値の検査。副作用として低下し過ぎてしまいアジソンの症状が出ていないか注意が必要。副腎腫瘍の場合、外科的処置を行う事もあるが難しい場合が多い。水を切らさないように常に新鮮な水が飲めるようにする。脱毛等の皮膚の症状は、3~4ヶ月間しないと改善してこないことがある事をしっかり説明する。
アジソンと同様にストレスがコルチゾールの分泌に関与し、ストレスがかかると増えてしまうのでなるべく普段通りの生活を送れるように、ストレスがかからないように注意が必要。
糖尿病
肝膵資料参照
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いかがでしたでしょうか。
内分泌疾患は少々難しく、しっかり理解するのは大変かもしれませんが、理解していると病気の発見を早くすることができます。
様々な症状が組み合わさるので、難しい症状も多いですが、きちんと理解し
診察室だけではなく、いろいろな場所、タイミングで病気の発見を早めてあげれるようになりたいと思います。
看護師 坂本恵